2024年度の企業倒産件数が11年ぶりに1万件を超える可能性が高まっています。深刻な経済状況の中で、多くの企業が経営の難局に直面しています。この記事では、倒産増加の背景にある物価高騰や人手不足の影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
物価高が中小企業を圧迫、倒産件数急増の要因に
東京商工リサーチの発表によると、2024年1月から11月までの全国の企業倒産件数は9164件に達し、既に前年1年間の8690件を上回っています。中でも、物価高騰の影響でコスト上昇分を販売価格に転嫁できず、経営破綻する「物価高倒産」が急増している点が懸念されています。長引く円安による輸入材高騰も、この状況に拍車をかけています。
物価高倒産増加のグラフ
物価高関連の倒産は650件と、既に前年1年間の646件を超えており、値上げ分を価格転嫁しにくい中小・零細企業の苦境が浮き彫りになっています。経済アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「大手企業に比べて資金力や交渉力の弱い中小企業は、物価高の影響を大きく受ける傾向がある」と指摘しています。
人手不足倒産も過去最悪ペース、社会保険料負担増が追い打ち
人手不足による人件費の高騰も、企業の経営を圧迫する大きな要因となっています。人件費の上昇は社会保険料の負担増にもつながり、倒産増加の新たなリスクとなっています。1月から11月までの社会保険料を含む税金関連の倒産は、前年同期比2.0倍の165件に達し、2018年の105件を大きく上回り、年間最多を更新しました。
飲食店経営の経験を持つ佐藤花子氏(仮名)は、「人材確保のために賃上げを行ったものの、社会保険料の負担増で経営が苦しくなった」と自身の経験を語っています。人手不足は、企業にとって深刻な経営課題となっていることが伺えます。
多くの業種・地域で倒産増加、年末にかけてさらに増加の懸念
業種別に見ると、「農・林・漁・鉱業」「建設業」「製造業」「卸売業」「小売業」「情報通信業」「サービス業他」の7産業で、既に前年の年間倒産件数を上回っています。地域別でも、北海道と中部を除く7地区で前年の年間倒産件数を超えており、全国的な傾向となっています。
このままのペースで倒産件数が増加すれば、2年連続で全国9地区すべてで前年を上回る可能性も出てきています。特に、年末は様々な債務の支払い期限を迎えるため、倒産件数が増加する傾向にあります。今年の12月も前年と同程度の800件以上に増加すると予想され、年間の累計倒産件数が1万件を超える可能性は高いと見られています。
今後の見通し、日銀の追加利上げでさらなる倒産増加の懸念も
今後の見通しについては、日本銀行の金融政策も重要な要素となります。日銀が追加利上げに踏み切った場合、金利上昇による企業負担はさらに増し、来年以降も倒産件数がさらに増加する懸念が高まります。専門家からは、政府による中小企業支援策の拡充や、企業自身によるコスト削減努力の必要性が指摘されています。
今後の経済動向に注視していく必要があるでしょう。