この記事では、重度知的障害を持つ姉がいる高校生、大橋涼太さんの葛藤と、全国高校総合文化祭での弁論発表を通して見えてきた「きょうだい児」の現状、そして社会へのメッセージについてお伝えします。姉の存在を隠していた大橋さんが、勇気を出して声を上げた理由とは? きょうだい児が抱える生きづらさ、そして彼らが望む未来について、一緒に考えてみませんか。
姉の存在を隠していた日々
「お兄ちゃん、お姉ちゃんいるの?」と聞かれるたびに、ドキッとする大橋さん。 2歳年上の姉は重度知的障害を持ち、日常生活全般に介助が必要です。 知能は2歳児程度で、会話はできません。 大橋さんは、そんな姉の存在を必死で隠そうとしてきました。
壇上でスピーチをする大橋涼太さん
友人といる時に母親から姉の写真が送られてきた際も、画面を見られないようにとっさにスタンプで隠してしまうほど。 「姉を見せるのは恥ずかしい」という気持ちが、大橋さんを苦しめていました。 電車内で、高校生が「障がい者」という言葉で相手を揶揄する場面を目撃した時には、驚きとともに、「姉のことを話したら白い目で見られるかもしれない」という不安に襲われました。
きょうだい児としての葛藤と弁論大会への挑戦
「きょうだい児」とは、障がいや病気を持つ兄弟姉妹がいる子どものことを指します。 大橋さんは、多くのきょうだい児が自分と同じように、きょうだいのことを恥ずかしく思うことがあるのではないかと感じています。
進路選択で福祉の道を勧められたり、結婚を反対されたり…。 きょうだい児であるがゆえに、人生の選択を制限される人々がいる現実に、大橋さんは疑問を抱きます。「きょうだい児は、自分らしく生きることはできないのか?」
賞状を受け取る大橋涼太さん
これまで誰にも姉のことを話してこなかった大橋さんですが、「世間がきょうだい児の思いを知っているか知らないかで状況は変わる」と信じ、全国高校総合文化祭の弁論部門に出場することを決意。 壇上で、今まで抱えてきた葛藤や社会へのメッセージを涙ながらに語り、見事優秀賞を受賞しました。
きょうだい児が自分らしく生きられる未来へ
大橋さんは、障がい者への理解が深まり、きょうだい児がもっと自分らしく生きられる社会を願っています。 福祉の道だけでなく、様々な分野で障がい者を支えることができると訴え、政治家になって政策を考える道もあると語ります。 「自分の得意なことを活かし、多方面から障がい者を支えられる人間になりたい」という大橋さんの力強い言葉は、多くの人の心に響くでしょう。
大橋さんの勇気ある行動がきっかけとなり、きょうだい児を取り巻く環境がより良い方向へ変化していくことを期待します。 そして、誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。