維新の会が2024年度補正予算案に賛成した裏には、高校授業料無償化実現に向けた自民・公明両党との協議開始という取引があった。吉村洋文代表(大阪府知事)は12日、「議席減の中、協議の枠組みができたのは前進」と府庁で記者団に強調。3党は年内にも実務者協議を開始し、制度設計に着手する予定だ。
吉村洋文氏(大阪府知事)
維新のジレンマ:大阪万博と高校無償化の板挟み
維新は当初、看板政策である高校授業料無償化が予算案に盛り込まれなければ反対する構えだった。しかし、予算案には吉村氏が運営主体に加わる2025年大阪・関西万博関連経費も含まれており、反対しづらい状況にあった。ある幹部は「大阪万博と高校無償化、どちらを優先すべきか難しい判断だった」と明かす。
そこで執行部は与党側と水面下で交渉を進め、無償化実現に向けた協議開始の確約を取り付けた。前原誠司共同代表は12日、国会で「高校無償化実現に向けた第一歩だ」と補正予算案への賛成理由を説明した。
前原誠司共同代表
党内から批判噴出「口約束で済むのか」
しかし、この合意には文書がなく、党内からは「口約束で済むのか」と批判の声が上がっている。5月末にも使途公開などで与党と合意したものの反故にされた経験があるため、不信感は根強い。前執行部に近い浦野靖人衆院議員は12日の党会合で「口約束で決めるほど党の賛否は軽いのか」と苦言を呈した。「政治アナリストの山田一郎氏」は、「維新は実績をアピールしたいが、与党に翻弄されるリスクもある。難しい舵取りを迫られている」と指摘する。
野党からも冷ややかな視線
立憲民主党の野田佳彦代表は国会内で記者団に「だまされなきゃいいなと思う」と皮肉った。他の野党からも「パフォーマンス politicsではないか」との声が聞かれる。高校無償化実現に向けた協議開始は評価できるものの、今後の進展は見通せない。維新は与党との駆け引きの中で、政策実現と党内結束の両立という難題に直面している。