手術のリアル:医療ドラマが決して描かない驚きの世界

医療ドラマは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。緊迫した手術シーン、鮮やかな手技、そして劇的な結末。しかし、実際の外科手術は、テレビ画面で描かれる世界とは大きく異なる。この記事では、外科医けいゆう氏の著書『すばらしい医学』を参考に、医療ドラマでは決して描かれない手術の真実、そして人体という小宇宙の神秘に迫る。

初めての手術見学:医学生の衝撃体験

医学生にとって、初めての手術見学は忘れられない経験となる。日常とはかけ離れた手術室の光景、そして目の前で繰り広げられる生々しい手術の様子に、衝撃を受ける学生も多い。中には、気分が悪くなり倒れてしまう学生もいるほどだ。もちろん、患者さんの同意を得た上で、厳重な管理下で行われているとはいえ、そのインパクトは計り知れない。

皮膚を切るその先:医療ドラマがカットする真実

医療ドラマでは、メスで皮膚を切るシーンは頻繁に登場する。しかし、その後の描写はたいていカットされ、次の瞬間にはお腹が開き、臓器が露出している。まるで魔法のように描かれるこの場面こそ、現実の手術と大きく異なる点だ。

開腹手術の様子開腹手術の様子

実際には、皮膚を切開した後に、数センチにも及ぶ腹壁を切開していく必要がある。この過程には数分を要し、メスではなく、電気メスが用いられる。電気メスは、電流によって組織を切開すると同時に、出血を止める役割も果たす優れものだ。焼けるような匂いと煙が立ち込める中、外科医は慎重に腹壁を切り進めていく。この電気メスの使用シーンこそ、医療ドラマでは描かれない真実の一つだ。

電気メス:手術に欠かせない名脇役

電気メスは、まるでペンのような形状をしており、通電することで初めて切開が可能となる。その先端は鋭利ではなく、電流が流れることで組織を焼き切り、出血を最小限に抑える。医療ドラマでは、電気メスを使用するシーンで焼ける音や煙は再現されることもあるが、実際に焼かれる対象までは映し出されない。鶏肉などを用いて煙を再現しているという裏話もある。

開腹:人体という小宇宙への入り口

皮膚の切開、そして電気メスによる腹壁の切開を経て、最後に腹膜を切開することで、ようやく腹腔内に到達する。ここで初めて、小腸、大腸、肝臓といった臓器が姿を現す。まさに、人体という小宇宙への入り口が開かれる瞬間だ。

人体内部の臓器人体内部の臓器

この開腹操作は、手術全体のほんの数分に過ぎない。しかし、医学生にとっては、未知の世界への扉を開く、衝撃的な体験となる。

人体の神秘:終わりなき探求

外科医けいゆう氏は、著書『すばらしい医学』の中で、人体を「小宇宙」と表現している。その複雑で精緻な構造、そして未知なるメカニズムは、私たちに終わりなき探求心を抱かせる。医療ドラマでは描かれない手術のリアルを知ることで、改めて人体の神秘、そして医療の奥深さを実感することができるだろう。

医学博士、佐藤健一郎氏(仮名)は、「医療ドラマはエンターテイメントとして楽しむべきであり、必ずしも現実の医療を正確に反映しているわけではない」と指摘する。手術のリアルを知ることで、医療に対する理解を深め、健康への意識を高めるきっかけとなるだろう。