TikTokで相次ぐ収益停止問題:政治的報復か、それともシステム障害か?

若者を中心に世界中で絶大な人気を誇るショート動画プラットフォーム「TikTok」で、この数日間、著名ユーザーの収益化が相次いで停止されるという「異変」が発生しています。多くのクリエイターが困惑する中、その原因について様々な憶測が飛び交い、日本のSNS上では日中関係の悪化による政治的報復ではないかという声も上がりました。本記事では、このTikTok収益停止問題の現状と、その背景にある可能性を探ります。

著名TikTokerたちに広がる収益停止の波

今回の問題は、12月上旬から複数の著名TikTokerが自身の収益化が停止されたことを報告し始めたことで表面化しました。元ラグビー選手で18万人のフォロワーを持つノッコン寺田氏(40)は12月9日、YouTubeのサブチャンネルで、自身と妻のアカウントで月20万円ほどあった収益が突然停止されたことを明かしました。原因は不明とのことです。

明日香演じてます氏(フォロワー7万9000人)もまた、9日までに「アカウントが不適格である」との通知を受け、収益化がストップしたと報告しています。運営からは「非オリジナルコンテンツ」と判断されたと説明されたものの、自身は「完全オリジナル」であると異議を申し立てましたが、承認には至りませんでした。同氏によれば、今年の夏にも同様の一斉収益剥奪があったといい、「バグではないか」と推測していました。

収益剥奪を訴える明日香演じてます氏のTikTok投稿収益剥奪を訴える明日香演じてます氏のTikTok投稿

さらに10日には、ヒロマサ@お金の勉強氏(フォロワー2万6000人)、コバにゃん☆氏(フォロワー25万9000人)がそれぞれ収益化停止を報告。その他にも、ゆりあ氏(フォロワー9万3000人)など、12月8日前後にかけて多くの著名ユーザーが運営からの収益化停止を訴えていました。

収益停止の背景にある憶測:日中関係悪化の影響か?

多数のユーザーの収益化が突然停止されたこと、そしてTikTokの運営元が中国発のテクノロジー企業「バイトダンス」であることから、SNS上では日中関係の冷え込みが影響しているのではないかという憶測が広まりました。特に、高市早苗首相(当時)が台湾有事を巡る答弁で「存立危機事態になり得る」と発言して以来、中国が猛反発している状況が指摘されました。

WEBメディア記者は、「高市首相の発言から約1カ月が経ち、歌手の浜崎あゆみさん(47)や『ONE PIECE』の主題歌で知られる大槻マキさん(52)など、日本人アーティストの中国公演が相次いで中止になっています。他にも、中国当局による水産物輸入の一時停止や訪日自粛要請といった日本への圧力が続いているため、今回の収益停止も日本人を狙い撃ちにした“報復ではないか”と疑う声が一部から上がったのでしょう」と述べています。

このような状況から、「中国、日本人TikToker収益化剥奪の報復開始」「これが中華アプリのリスクなんだよなぁ」といった投稿がX(旧Twitter)上で見られました。

システム障害が原因と判明:TikTok Japanが公式見解を発表

しかし、一方ではシステム上のバグではないかとの指摘もX上で多く見られました。「どうせいつものバグだろ 中国の報復措置だとか言ってる人がいるけど、そもそも中国と海外でリージョンが違うから法人が違う」という意見や、「TikTok収益化剥奪は日中関係が!ってXでは騒がれてるがおそらくデマ。英語圏でもこのバグが発生し剥奪されてる。フォロワー10万人未満くらいでこの現象は起きているが大体今日の午後くらいから収益化が戻り始めてる。おそらく今月からのシステム更新が原因」といった冷静な分析も共有されました。

あるITジャーナリストは、日本だけでなく海外のユーザーからも同様の報告が相次いでいることを指摘。また、一時的に収益停止措置を受けたものの、異議申し立てが承認され、凍結が解除されたと報告するユーザーも次々と現れました。

そして11日、事態の真相が明らかになりました。TikTokを運営する「TikTok Japan」は朝日新聞の取材に対し、12月4日から10日にかけて、日本を含む8つの国・地域で投稿者が収益を得るプログラムに障害が発生していたことを認めました。この障害はすでに修正済みであると発表されており、多くのユーザーの不安は解消へと向かっています。

まとめ

今回のTikTokでの収益停止問題は、当初こそ日中関係の悪化による政治的報復という憶測を呼びましたが、最終的には日本を含む広範囲で発生したシステム障害であったことがTikTok Japanによって公式に確認されました。多くのクリエイターが混乱と不安に陥ったものの、問題が解決されたことで、今後も引き続き魅力的なコンテンツが発信されることが期待されます。今回の件は、グローバルなプラットフォームにおける技術的問題が、ユーザーコミュニティに与える影響の大きさを改めて示す出来事となりました。

参考文献