老猫との暮らし:愛と工夫が織りなす日々の物語

人生のパートナーとして、気の合う友人と共に暮らすという新しい家族の形を提示し、ニューヨークタイムズからも絶賛された韓国発のエッセイ『女ふたり、暮らしています。』。このベストセラーの改訂・加筆版から、著者であるキム・ハナさんとファン・ソヌさんが愛する老猫たちとの日常を綴った「ゴロを見送る」の一部をご紹介します。日々の喜びと、避けられない別れに直面しながらも、深い愛情を注ぐ飼い主たちの姿は、多くのペット愛好家の心に響くでしょう。特に高齢の猫との暮らしは、特別な配慮と無限の愛情を必要とします。

猫たちのユニークな声:誤解を超えて

猫がただ「ニャオーン」と鳴くというのは、猫をよく知らない人々の間で広まっている誤解かもしれません。実際には、猫たちはもっと多様な声で私たちに語りかけます。「ウァーン」と呼びかけ、「ウゥーン?」と挨拶し、時には「オンマ!」「オンニ?」「ウェエ〜(なんでよ〜)」と、まるで人間の言葉のように感情豊かな声を発することもあります。猫たちのコミュニケーションは、私たちが想像するよりもはるかに複雑で、日々共に過ごす中でその意味を理解していく喜びは、猫との暮らしの醍醐味の一つです。

18歳のハク:食卓のこだわりと飼い主の奮闘

著者たちが共に暮らす4匹の猫のうち、18歳を迎えた一番目の猫、ハクは、毎朝「ウォォォォッ!」という怒りに満ちた叫び声で人々を起こします。その声は「お腹が空いた。早くご飯を出せ!」という意味だと、誰もがはっきりと理解できるほどです。心不全を患うハクには、1日2回の薬と栄養剤が必要で、特別にウェットフードと様々なおやつを混ぜて与えられます。しかし、ハクは非常にグルメで、毎回少しでも材料に変化がないと興味を示してくれません。

さらに、器にもこだわりがあり、平べったいお皿の縁にたっぷりと余白を残し、真ん中に見栄えよく盛り付けないと、匂いを嗅ぐだけでそっぽを向いてしまうのです。飼い主たちはまるで格式高い高級レストランのシェフのように、毎日慎重にマグロや鶏むね肉のキャットフードを選び、スプーンで潰して食べやすく盛り付け、さらには貝柱のスープをかけて差し上げるという徹底ぶり。しかし、それでも「これじゃない、これじゃないんだってば」というハクの厳しい評価に、落胆することも少なくありません。

その度に、飼い主はご飯の上にペースト状のおやつを少し絞ったり、カリカリとしたスナックを細かく砕いて載せたりと、あの手この手で工夫を凝らします。別のきれいな皿に移し替えるなどの努力も惜しまず、気づけば猫の食器の洗い物が人間の食器よりも山積みになっている日常は、高齢猫と暮らす多くの家庭で共感される情景かもしれません。
二人の女性と愛猫が寄り添う穏やかな日々二人の女性と愛猫が寄り添う穏やかな日々

高齢猫と暮らすということ:終わりのない愛情と忍耐

高齢の猫との暮らしは、単なるペットとの生活を超えた、深い絆と責任を伴います。彼らが発する一つ一つの声、食事へのこだわり、そして日々の小さな変化に、飼い主は細心の注意を払い、無限の愛情と忍耐をもって向き合います。それはまるで、言葉を話せない家族の一員を介護するようなものです。身体的な衰えだけでなく、心境の変化にも寄り添い、彼らが最期まで穏やかに、そして幸せに過ごせるよう、あらゆる努力を惜しまない。このエッセイは、そんなかけがえのない存在である老猫たちとの共同生活を通じて、愛情の深さ、家族の多様な形、そして避けられない別れへの心の準備を、静かに問いかけてきます。ペットとの時間は有限ですが、その中で育まれる愛と経験は、私たちの人生を豊かにするかけがえのない宝物となるでしょう。

参考文献

  • キム・ハナ, ファン・ソヌ (2025). 『増補新版 女ふたり、暮らしています。』
  • Yahoo!ニュース. (2025年12月13日). 老猫が教えてくれたこと「終わりが見えるからこそ愛おしい」.