韓国では、12月3日深夜に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が突如「非常戒厳」を宣言し、その後未明に解除するという騒動が発生しました。この出来事から1週間が経過しましたが、尹大統領への弾劾案提出、出国禁止措置、内乱容疑など、依然として政局は混乱を極めています。本稿では、この一連の騒動を振り返りつつ、今後の韓国政局の行方について考察します。
戒厳令騒動から弾劾案否決まで
12月3日深夜、尹大統領による緊急戒厳令の発令は、韓国社会に大きな衝撃を与えました。軍の国会への出動など混乱が広がる中、メディアは終夜ニュースを伝え続けました。戒厳令自体は12月4日未明に国会で否決され、尹大統領が解除を宣言したことで一夜にして終結しましたが、国民の尹大統領に対する不信感は高まり、退陣を求める声が強まっています。
韓国・ソウルで集会に参加する人々
12月7日には、野党「共に民主党」が尹大統領の弾劾案を提出しました。野党側は賛成票を投じましたが、与党側は投票を放棄して退席したため、弾劾案は否決されました。しかし、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は、弾劾案が成立するまで国会に提出し続けると宣言しています。ソウルだけでなく、釜山や大邱などの地方都市でも、尹大統領の退陣を求める左派系団体によるデモが断続的に行われており、混乱は長期化する様相を見せています。
与党内の亀裂と尹大統領の窮地
弾劾案を可決させるには、国会議員300名のうち200名以上の賛成票が必要です。野党側の票数に加え、与党「国民の力」から8名の賛成票が必要となります。そのため、次回の弾劾案提出に向けて、与野党間の駆け引きが激化すると予想されます。
与党内でも尹大統領に反感を持つ議員は少なくありません。特に、国民の力代表で、かつて尹大統領の右腕と目されていた韓東勲(ハン・ドンフン)氏との確執は深刻です。韓氏は李代表との密接なつながりから「もはや左側の人間」と見なされており、次期大統領候補としての期待も薄れています。
さらに、検察は尹大統領の出国禁止措置を決定し、内乱罪の適用も検討しています。尹大統領の立場はますます危うくなっています。
戒厳令騒動の真相と今後の展望
当初、戒厳令騒動は尹大統領が自身の立場を守るための暴走と見られていましたが、様々な見方も出てきています。例えば、「尹大統領は4月の総選挙における不正選挙を暴こうとしていた」「本来の目的は、自分を陥れようとした李氏と韓氏を逮捕することだった」といった説です。
韓国政界に詳しい専門家、例えば「パク・チョルス」氏(仮名)は、「今回の騒動は、韓国政治の不安定さを改めて浮き彫りにした。今後の政局の行方は予断を許さない」と指摘しています。
いずれにせよ、与野党の対立は激化し、混乱が続くことは避けられないでしょう。
デモの活況と国民感情の高まり
尹大統領の退陣を求めるデモは全国に広がりを見せており、8年前の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾・罷免につながった「ロウソクデモ」を彷彿とさせます。
デモ会場では、色とりどりのペンライトが振られ、K-POP音楽が流れる中、参加者たちが声を上げています。その熱狂的な雰囲気は、政治デモというよりも、まるでフェスティバルのようです。
これらのデモの盛り上がりは、国民の政治への関心の高まりと、現状への不満を反映していると言えるでしょう。今後の政局の行方を見守る必要があります。