尹大統領、検察の出頭要請に応じず 戒厳令発令で内乱罪捜査の渦中

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、検察の出頭要請に応じなかったことが波紋を広げている。検察は戒厳令発令を巡り、内乱および職権乱用の疑いで捜査を進めており、11日に通知した15日午前10時への出頭を要請していた。しかし、聯合ニュースによると、尹大統領はこの要請に応じなかったという。大統領府周辺は緊迫した空気に包まれ、今後の展開に注目が集まっている。

戒厳令発令の真相:検察の厳しい追及

検察は、尹大統領が12月3日に発令した戒厳令について、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした疑いがあるとみて、内乱罪の「首謀者」と位置づけている。大統領は憲法で不訴追特権が保障されているものの、内乱罪は例外となるため、検察の追及は厳しいものとなっている。尹大統領は12日の談話で徹底抗戦の意思を表明しているが、検察は16日ごろに再度出頭を要請する方針だ。

韓国の尹錫悦大統領韓国の尹錫悦大統領

出頭拒否の背景と今後の見通し

尹大統領の出頭拒否の背景には、弾劾訴追案の可決による職務停止という苦境がある。14日に国会で可決された弾劾訴追案により、尹大統領は職務停止に追い込まれたものの、身辺警護など大統領としての特権は保持したまま、ソウル市内の大統領官邸で生活しているという。 今後の捜査において、尹大統領が繰り返し出頭要請に応じない場合、検察は裁判所に逮捕状を請求する可能性も視野に入れている。韓国の現職大統領が身柄を拘束される事態となれば、史上初めての出来事となる。

関係者の動向と捜査の行方

検察は10日、戒厳令を尹大統領に進言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相を内乱などの容疑で逮捕。さらに11日には警察が大統領府への家宅捜索に着手し、高官犯罪捜査庁も軍幹部の事情聴取を続けている。戒厳令発令を巡る捜査は、合同捜査本部と検察の特別捜査本部がそれぞれ進めており、その行方が注目されている。

弾劾訴追と大統領選への影響

尹大統領への弾劾訴追については、憲法裁判所が180日以内に是非を判断する。訴追が妥当と認められれば尹大統領は罷免され、60日以内に大統領選が行われることになる。今回の出頭拒否は、弾劾訴追と大統領選の行方にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

専門家の見解

政治アナリストの加藤氏は、「尹大統領の出頭拒否は、検察との対決姿勢を鮮明にしたものと言えるでしょう。今後の捜査の進展次第では、国民の支持を失い、弾劾訴追が現実味を帯びてくる可能性も否定できません」と指摘する。

韓国政界の混乱は深まるばかりで、今後の動向から目が離せない状況だ。