日本の各地で「再生可能エネルギー」の名の下に進むメガソーラー建設が、深刻な環境破壊を引き起こしている実態に警鐘が鳴らされています。釧路湿原の希少生物を脅かす「黒い海」から、福島県の吾妻連峰で進行する大規模な森林伐採と住民の心の痛みに焦点を当て、その背景にある問題を探ります。この開発は、美しい景観の破壊、生態系の危機、そして新たな「光害」といった多岐にわたる問題を引き起こし、多くの人々の故郷を蝕んでいます。
広がるメガソーラー開発の闇と故郷の悲鳴
福島県と山形県にまたがる吾妻連峰の一部である先達山は、福島市の市街地からもはっきりとその姿を望むことができます。しかし、近年この山肌は60ヘクタールにもわたり削られ、約9万6000枚ものソーラーパネルが蛇のウロコのように敷き詰められています。この景観の変貌は、地元住民に大きな衝撃を与えています。市民団体「吾妻山の景観と自然環境を守る会」代表の矢吹武さんは、「山が傷ついているのを見た瞬間、心が折れました」と語り、東日本大震災で多くを失った際も心の支えであった故郷のシンボルが壊されていく現状に深い悲しみを感じています。
太陽光を反射するメガソーラーパネル。7km離れた高速道からも強い光が目に入り危険な状態
釧路湿原でも同様に、メガソーラーの建設が進み、太陽光パネルが「黒い海」のように広がり、希少生物の生息が脅かされています。地元からは「7㎞ほど離れた高速道を走っていても、強い光に目を奪われてヒヤリとした」といった、パネルによる眩しさに関する声も上がっており、景観破壊だけでなく、人々の生活にも影響が及び始めています。
生態系への深刻な影響と新たな「光害」
メガソーラー開発による環境への影響は、景観破壊にとどまりません。伐採された地域はツキノワグマの生息地とされており、行き場を失ったクマが市街地へ下りてくるケースが増加しています。因果関係は断定できないものの、実際に福島市内ではクマの目撃件数が例年の2倍に増えるという異例の事態が発生しています。これは、大規模な森林伐採が生態系に与える深刻な影響の一端を示唆しています。
さらに、近年では「光害」という新たな問題も顕在化しています。地元住民からは、「パネルに太陽光が反射して、太陽が2つあるみたいに眩しい。目が痛くて数秒も見ていられない」といった切実な声が寄せられています。記者が現地で取材した際にも、時間帯と角度によってはかなりの眩しさを感じ、運転中に思わずハンドルを握る手に力が入るほどでした。このような強烈な反射光は、住民の日常生活に支障をきたし、安全面でも懸念を引き起こしています。
事業者と行政の「闇」:不透明な許認可と資金提供
先達山のメガソーラー事業を継続的に調査している市民団体「先達山を注視する会」代表の松谷基和さんは、事業者であるAmp社と行政との間に根深い問題があることを指摘しています。事業者が林地開発許可を取得する際に行政に提示した景観予測に比べ、実際に切り開かれた山林の範囲が大きく超えているという疑念が浮上しています。緑化計画も失敗に終わっており、環境への影響が過小に説明されていた可能性が指摘されています。
松谷さんが県の担当課に許可の経緯を尋ねても、「詳しいことは事業者に聞いてください」とたらい回しにされ、行政の消極的な姿勢が浮き彫りになっています。福島市の木幡浩市長は景観予測を「虚偽に近い」と批判しているにもかかわらず、行政は住民から工事の違法性を指摘されても「お願いベースの指導止まり」で、その理由が不透明です。
さらに、松谷さんは山の麓で事業者による「謎の金銭提供」が行われたことを明らかにしています。Amp社は工事着工後の2022年に、現場近くの複数の町内会で構成される「区」に対し、1800万円を超える資金提供を行いました。事業者は地域貢献が目的だと主張していますが、その意図や経緯には不透明な点が残されています。
今回のメガソーラー開発は、日本の豊かな自然と地域社会にもたらす多面的な問題点を浮き彫りにしています。再生可能エネルギー推進の陰で、景観破壊、生態系危機、光害、そして不透明な行政プロセスが進行していることへの警鐘は、私たちに真に持続可能なエネルギーとは何か、そして地域住民の生活と自然環境を守るための開発のあり方を深く問いかけています。
出典元:https://news.yahoo.co.jp/articles/6bd12174d928a729d39c275dad902bdd94455fd9





