韓国の政治的混乱が続く中、世界の半導体産業はAI時代への転換期を迎えています。米国や台湾の企業が躍進する一方で、韓国企業はメモリー半導体分野での優位性さえも揺らぎ始めています。果たして韓国は、この激動の時代を乗り越え、半導体大国としての地位を守り抜けることができるのでしょうか。
ブロードコム、AI特需で時価総額1兆ドル突破
AI関連の売上高が前年比220%増と驚異的な成長を遂げたブロードコム。その時価総額はついに1兆ドルを突破し、エヌビディア、TSMCに次ぐ世界第3位の半導体企業となりました。AIアクセラレータ市場を独占するエヌビディアへの依存を軽減したいGoogle、Amazon、Appleなどの大手IT企業が、ブロードコムのチップ連結技術に注目。AI時代における同社の重要性が、この躍進を支えています。 わずか2年前にはサムスン電子の時価総額の70%に過ぎなかったブロードコムですが、今やその差は4倍に。サムスンもオンデマンド半導体事業とファウンドリー事業の連携を試みていますが、目立った成果は出ていません。
ブロードコムのチップ連結技術
TSMC、2ナノプロセスで他社を圧倒
ファウンドリー市場で圧倒的なシェアを誇るTSMCは、次世代2ナノメートルプロセスの開発でも順調な進捗を見せています。3ナノプロセスと比較して電力消費量を最大35%削減、性能は15%向上。回路配線の変更や新素材の導入など、様々な新技術を駆使し、初期歩留まりも良好とのこと。来年下半期からの量産開始を予定しています。
業界専門家の山田一郎氏(仮名)は、「TSMCの技術革新は目覚ましい。2ナノプロセスは、AI時代の半導体産業をさらに加速させるでしょう。」と述べています。
インテル、巻き返しなるか?1.8ナノ級プロセスで勝負
かつての王者インテルも、超微細工程に社運を賭けています。1.8ナノ級プロセス(18A)で製造される新型CPUの試作品を顧客に提供することに成功したと発表。来年には18Aプロセスでの量産開始を目指しています。また、新CEO候補としてAppleのハードウェア部門を率いるジョニー・スルージ氏が浮上しているとの報道も。
韓国半導体、HBMでチャンス到来も…
システム半導体の陰に隠れていたメモリー半導体ですが、AIに最適化された広帯域メモリー(HBM)の登場は、韓国企業にとって大きなチャンスです。しかし、政治の混乱による株価・為替相場の不安定化、半導体特別法の議論中断、中国企業による低価格メモリーの攻勢など、逆風も吹いています。
さらに、HBM市場でも米国のマーベルテクノロジーが主導権を握ろうとしています。サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンを呼び集め、次世代HBMアーキテクチャーの開発に乗り出すと発表。韓国企業は、AI技術市場においてメモリー半導体供給者という脇役の立場に甘んじてしまう可能性も懸念されています。
AI時代に生き残るために
韓国半導体産業は、まさに岐路に立たされています。AI時代の中心プレイヤーとなるか、それとも下請けに甘んじるか。嘉泉大学のキム・ヨンソク客員教授は、「今こそ韓国半導体産業の真価が問われる時です。」と警鐘を鳴らしています。 技術革新、人材育成、そして政治的安定。これらをいかに実現していくかが、韓国半導体の未来を左右するでしょう。