令和ドラマの「共感疲れ」?「若草物語」「マイダイアリー」に見る繊細すぎる主人公たち

現代ドラマの主人公たちの繊細さに、共感よりも疲れを感じてしまうことはありませんか? 日本テレビの「若草物語」とテレビ朝日の「マイダイアリー」を例に、その実情と視聴者の反応を探ってみましょう。

共感できない?「若草物語」四姉妹の不可解な行動

「若草物語」といえば、四姉妹の絆を描いた名作。しかし、今回のドラマ化では、共感を得にくい展開に戸惑う視聴者も多いようです。特に、次女の非恋愛主義を声高に主張する姿や、三女の失踪に対する姉妹たちの反応には、疑問の声が上がっています。

三女は2年間も音信不通。LINEも既読にならず、家族は安否も確認せず、ただLINEを送り続けるだけ。金銭感覚がルーズな母親にも甘く、セクハラ上司やモラハラ彼氏に悩む長女、そして末っ子である四女。一見仲の良い姉妹に見えても、心の繋がりは希薄に感じられます。

若草物語の次女役、堀田真由若草物語の次女役、堀田真由

三女の失踪理由は、女優を目指す中で、次女の言動に息苦しさを感じていたから。そして、偶然出会った漁師に助けられ、漁師町で暮らしていたというのです。怒るべき場面で怒らず、我慢するべき場面でも我慢しない。このような行動の裏にある心理描写が不足しているため、視聴者としては共感しづらいのかもしれません。

朝ドラ「おむすび」との類似点

「若草物語」の登場人物たちの行動は、NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」の人物造形にも似ているという指摘があります。どちらも、現代の若者の繊細さを描き出そうとしているのかもしれませんが、それがかえって視聴者との距離を生んでしまっているのではないでしょうか。

繊細すぎる?「マイダイアリー」の登場人物たち

もう一つの例として、テレビ朝日の「マイダイアリー」を見てみましょう。実力派の若手俳優陣が揃っていますが、彼らが演じる登場人物たちは、あまりにも繊細で、共感しづらいという声が聞かれます。

過去のトラウマや家族との確執に苦しむ登場人物たち。しかし、その原因となる出来事が些細に感じられ、「なぜそこまで引きずるのか?」と疑問に思う視聴者も少なくありません。人前であくびができない、同級生の父親に誘拐されかけたトラウマ、面接をすっぽかして他人の心の傷に寄り添う…共感を得るには、もう少し深い描写が必要ではないでしょうか。

吉田潮氏のコメント吉田潮氏のコメント

エンパスというキーワード

「マイダイアリー」の登場人物たちは、まるでエンパスのように他人の感情に敏感に反応します。しかし、その共感性が過剰に描かれているため、現実離れした印象を与えてしまうのかもしれません。現代社会において、他者への配慮や優しさは大切な要素ですが、ドラマで描く際には、バランスが重要です。

令和ドラマの新たな課題

「若草物語」と「マイダイアリー」に見られるように、現代ドラマでは、登場人物の繊細な感情描写が増えてきています。しかし、それが行き過ぎると、視聴者は共感するどころか、疲れを感じてしまう可能性があります。「共感疲れ」は、令和ドラマにおける新たな課題と言えるかもしれません。

テレビ評論家の吉田潮氏は、「令和ドラマは配慮と優しさで生ぬるく包み込もうとする傾向がある」と指摘しています。視聴者を引き込むためには、繊細な感情描写だけでなく、共感できるストーリー展開や、登場人物たちの成長を描くことが重要なのではないでしょうか。