【ソウル=依田和彩】今月3日の戒厳令宣布を巡り、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が捜査機関への抵抗を一段と強めている。自身への出頭要請に一切応じておらず、18日には大統領府への捜索を拒否した。ただ、捜査機関側は捜査態勢の一本化を表明し、尹氏の外堀を埋めつつある。
尹氏は18日、政府高官らを捜査する「高位公職者犯罪捜査庁」(公捜庁)や警察の合同捜査本部が求めていた出頭に応じなかった。合同捜査本部は再度の出頭要請を検討しているが、非協力姿勢が続く場合、内乱容疑で逮捕状を請求する可能性が指摘されている。
尹氏側は18日、合同捜査本部による大統領府などの捜索を11日に続き拒否した。尹氏は既に国会で弾劾(だんがい)訴追され、職務停止となっているものの、捜索拒否の理由の一つに「公務」を挙げた。尹氏は12日、捜査に「堂々と立ち向かう」と語っていた。
検察も15日に出頭するよう尹氏に求めていたが、尹氏はやはり応じなかった。尹氏の弁護団の一人は17日、出頭には複数の捜査機関が乱立している状況が整理される必要があるとの立場を記者団に示した。
こうした事態を受け、検察と公捜庁は18日に協議し、尹氏の捜査を公捜庁に移管することで合意した。検察は金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相や朴安洙(パクアンス)陸軍参謀総長など軍関係者を捜査し、尹氏への捜査は公捜庁や警察による合同捜査本部に一本化されることになった。これにより、尹氏側が出頭要請の重複を理由に出頭を拒否することは難しくなった。
韓国ではこれまで現職大統領が逮捕された例がない。2016年12月に弾劾訴追された朴槿恵(パククネ)元大統領は、憲法裁判所で罷免(ひめん)が決定した後の17年3月に逮捕された。憲法裁は尹氏の罷免の是非を来年6月までに判断する予定で、捜査機関も、尹氏の捜査への姿勢に加えて憲法裁の審査スピードをにらんで捜査するとみられる。