軍艦島を舞台に描く希望の光:日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第8話レビュー

日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』は、1955年から始まる石炭産業で栄華を極めた長崎県・端島(軍艦島)と現代の東京を舞台に、70年にわたる愛と友情、家族の物語を描いた壮大なドラマです。今回は、第8話のレビューをお届けします。

坑内火災と端島の衰退

1964年に発生した坑内火災は、端島の人々の生活を一変させました。鎮火の見込みがないと判断した炭鉱長の辰雄(沢村一樹)は、深部区域の水没放棄を決断。石炭の採掘が不可能となった端島からは、新たな職を求めて多くの鉱員とその家族が去っていきました。残された人々も希望を失い、酒に溺れる鉱員の姿も。鉱員たちの給料で支えられていた娯楽施設も経営難に陥り、映画館の館長・大森(片桐はいり)や職員クラブの管理人・町子(映美くらら)も島を去ることに。かつての活気は失われ、端島全体が重苦しい雰囲気に包まれます。

炭鉱の閉鎖で変わり果てた端島の街並み炭鉱の閉鎖で変わり果てた端島の街並み

そして何よりも、荒木家は進平(斎藤工)というかけがえのない存在を失いました。一酸化炭素中毒で倒れた進平は仲間に助け出され病院へ運ばれますが、帰らぬ人となってしまいます。進平が坑内で一人眠り続けることなく家族のもとへ帰れたこと、そして最後のポンプを止める作業を担った鉄平(神木隆之介)が自分を責めずに済んだことは、わずかな救いだったのかもしれません。しかし、家族にとっては、生きているかもしれないという一縷の望みが絶たれたという、残酷な現実でもありました。

希望の灯火を胸に

一平(國村隼)も長年の無理が祟り病に倒れてしまいます。家族の前では気丈に振る舞うハル(中嶋朋子)ですが、一人になると涙が止まらない。数ヶ月前、進平とリナ(池田エライザ)の息子・誠の1歳の祝いで「この歳になってこんな幸せがあるなんて」と涙を流していた彼女の笑顔が思い出されます。同じ涙でも全く意味合いが異なり、胸が締め付けられる思いです。

そんな状況下でも、鷹羽工業は未開発の石炭層がある新区域の開発を進めていました。状況が状況だけに、公に交際できない鉄平と朝子(杉咲花)ですが、「端島が復活したら必ず」と結婚の約束を交わします。人生には、生きていること自体が虚しく思えるような出来事が起こります。鉄平も、戦争で家族を失い、唯一の兄弟だった進平も亡くし、生きる糧も奪われ、何度も心が折れそうになったはずです。

鉄平と朝子は、端島の未来に希望を託す鉄平と朝子は、端島の未来に希望を託す

それでも幾度となく立ち上がってきた鉄平の生き様は、現代の玲央(神木隆之介)にも影響を与え、彼は先輩ホストのミカエル(内藤秀一郎)に貢がされているアイリ(安斉星来)を救い出します。「もっと思いっきり笑って、誰かのために泣いたり、幸せになってほしいって祈ったり、石炭が出てほしいって心の底から願ってみたい。ダイヤモンド…俺もダイヤモンドが欲しい」と玲央は言います。

著名な料理研究家、山田花子先生は、「困難な状況でも希望を持ち続けることの大切さ」を説いています。「どんな苦境にあっても、前向きな気持ちを持つことで、新たな道が開けるのです。」(架空のインタビューより)

このドラマのタイトルにある「ダイヤモンド」は、地底深くで掘り起こされる石炭のように、どんな暗闇からも人々が見出そうとする「希望」を象徴しているのでしょう。どんな困難に直面しても、希望を捨てずに前へ進むことの大切さを、このドラマは教えてくれているように感じます。