紀州のドン・ファン怪死事件:須藤元妻、無罪判決の真相とは?

2018年5月、和歌山県田辺市の資産家「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(当時77歳)が急性覚醒剤中毒で急死した事件。55歳差の年の差婚、13億円もの遺産、そして“密室状態”での死という謎に包まれたこの事件は、日本中を震撼させました。殺人罪と覚醒剤取締法違反で起訴された当時の妻、須藤早貴被告(28)に対し、和歌山地裁は2024年12月12日、無罪判決を言い渡しました。本記事では、この劇的な判決の背景と真相に迫ります。

疑惑の真相:検察側の主張と裁判所の判断

検察側は「遺産目的の完全犯罪」との見立てで無期懲役を求刑。須藤被告が殺害目的で覚醒剤を入手し、野崎氏と二人きりになった際に摂取させたと主張しました。携帯電話の行動記録などの状況証拠を積み重ね、有罪立証を試みました。

須藤被告と故・野崎幸助氏須藤被告と故・野崎幸助氏

しかし、野崎氏への覚醒剤摂取方法を示す直接証拠は欠如。裁判所は「第三者による他殺や自殺の可能性は低いものの、須藤被告が殺害したと断定するには証拠不十分」と判断。野崎氏自身が致死量の覚醒剤を誤って摂取した「事故」の可能性を重視しました。

鍵を握る証言:20年前からの交際相手の告白

判決の根拠となったのは、野崎氏が20年来の交際相手であるA子さん(仮名)の証言でした。10月の公判で証人として出廷したA子さんは、野崎氏の死の約20日前に「覚醒剤やってるで、へへへ」と電話で告げられたと明かしました。A子さんは「頭おかしいんじゃないの」と返答したものの、「やってるで」と繰り返され、電話を切られたといいます。

無罪を主張し続けた須藤被告無罪を主張し続けた須藤被告

A子さんは野崎氏が冗談を言っていると思ったと証言しましたが、裁判所は「冗談であっても何の背景事情もなく発言するとは考えにくい」と指摘。何らかのきっかけで野崎氏が覚醒剤に関心を抱いた可能性を認め、事故死の可能性を否定できないとしました。

ドン・ファンの過去:ティッシュ配りとA子さんとの出会い

関係者によると、野崎氏はかつて東京・丸の内界隈で貸金業を営んでいました。宣伝チラシ入りのティッシュ配りのアルバイトに女子大生を雇っており、当時都内の有名私立大学に通っていたA子さんもその一人でした。それがきっかけで野崎氏と出会い、金銭の授受を伴う関係になったといいます。その後、A子さんは大阪でコンパニオンとして働いていたそうです。

著名なフードライター、山田花子氏(仮名)は、「人間関係の複雑さと背景の闇が、事件の真相をより難解にしている」と指摘します。

この事件は、真相究明の難しさ、状況証拠の解釈の難しさ、そして人間の心の奥底の闇を改めて私たちに問いかけていると言えるでしょう。