ロシアによるウクライナ侵略に対する制裁は長期戦であり、その実効性を高めるためには更なる対策が必要だと、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のトム・キーティンジ金融安保部長が産経新聞のインタビューで強調しました。キーティンジ氏は、ロシア経済は制裁によって確かに苦境に立たされているものの、崩壊には至っていないと現状を分析。インドや中国によるロシア産エネルギー資源の輸入継続など、制裁の「抜け穴」の存在を指摘し、国際協調による更なる制裁強化の必要性を訴えました。
制裁の抜け穴を塞ぐ国際協調の必要性
キーティンジ氏は、制裁の効果を最大化するためには全ての国の参加が不可欠だと主張。ロシア産石油・天然ガスの購入をゼロに近づけるための具体的なタイムテーブルの作成や、制裁逃れに利用されている闇タンカーへの対策強化を各国に促すべきだと述べました。
インタビューを受けるトム・キーティンジ氏
二次制裁の重要性と北朝鮮との軍事協力への懸念
米国が昨年12月に発動した、ロシアの軍需産業と取引する第三国金融機関への二次制裁は、中国の銀行などがロシアとの取引を手控えるなど一定の効果を上げています。キーティンジ氏は、このように制裁に「超領域性」を持たせることが重要だと指摘。また、ロシアと北朝鮮の軍事協力についても強い懸念を示し、北朝鮮がロシアへの派兵の見返りに軍事技術を得る可能性を危惧していると述べました。ロシアの行動は国連安全保障理事会の対北制裁決議に違反しており、二次制裁を含む制裁の最大化が急務だと強調しました。
トランプ次期大統領の制裁活用への期待
キーティンジ氏は、来年1月に就任するトランプ次期米大統領が制裁を効果的に活用することに期待を示しました。トランプ氏は「米国人にとって良い取引をするための手段」として制裁をとらえていると分析。米国は石油・天然ガス輸出国であるため、ロシアの石油産業への更なる制裁強化や、ロシア産石油を購入するインドへの制裁圧力といったシナリオも想定されると述べました。
過去の成功例から学ぶ
キーティンジ氏は、2015年のイラン核合意を制裁が成果を上げた例として挙げました。イラン産石油を標的とした厳しい制裁がイランを交渉のテーブルに引き出したように、ロシアに対しても同様のモデルを構築する必要があると主張しました。
制裁の実効性向上に向けた今後の展望
専門家の分析からも、ロシアへの制裁は長期的な視点で、その抜け穴を塞ぎ、実効性を高めていく努力が不可欠であることが分かります。国際社会の連携強化、二次制裁の拡大、そして新たな制裁手段の模索など、今後の動向に注目が集まります。