北朝鮮へコメや聖書などを詰めたペットボトルを放流しようとした米国人6人が韓国で摘発された事件で、リーダーとされる50代の男性を除く5人が釈放されたことが明らかになりました。この行為は宗教的な宣教活動の一環とみられており、韓国当局はリーダーの取り調べと事件の詳細解明を進めています。
摘発と釈放の状況
仁川警察庁反腐敗捜査課は6月28日、災難および安全管理基本法違反の疑いで逮捕した米国籍の男性6人のうち、50代のリーダー格を除く5人を同日中に釈放したと発表しました。拘束が続くリーダーは、警察を通じてソウルの米国大使館に領事面会を申請し、すでに面会を終えています。警察は、押収したペットボトルなどの物品について科学捜査を行い、事件の全容解明を進めています。捜査関係者は「リーダーに関してはさらに調べが必要であり、詳細は捜査事項で明かせない」と述べています。
事件の詳細と背景
今回の事件は、6月27日午前1時6分頃、仁川市の江華郡で発生しました。リーダーを含む6人は、2リットル入りのペットボトル約1300本にコメ、1ドル紙幣、聖書などを詰め込み、満潮時を利用して北朝鮮へ向けて放流しようとした疑いが持たれています。この場所から放流されたペットボトルは北朝鮮沿岸に漂着するとされています。現場付近を哨戒していた軍部隊の兵士が不審な動きを通報し、駆けつけた警察官によって容疑者全員が現行犯逮捕されました。
北朝鮮への物品送付に使われるとされる、コメや聖書を詰めたペットボトル。(参考写真)
逮捕された6人はいずれも米国パスポートを所持しており、入国は2~3カ月前であることが確認されています。警察の調べに対し、彼らは周囲の目を避けるためワゴン車で物品を運び込み、共同で放流を計画したと供述しています。
宗教活動と今後の捜査
逮捕された6人は、警察に対し「宣教活動の一環として放流を試みた」と供述しています。警察はこの供述に基づき、彼らが韓国国内外のどのような団体と関係があるのかについても捜査を進めています。なお、事件が発生した江華郡では、2024年11月から北朝鮮に向けたビラや物品などの放流を全面的に禁止する行政命令が施行されており、今回の行為はこの命令に違反するものとみられます。
米国人グループによる北朝鮮への物品放流事件は、宗教活動と国際情勢が絡み合う複雑な様相を呈しています。5人は既に釈放されましたが、リーダーの捜査は続いており、背後関係を含めた全容解明が待たれます。今回の件は、韓国国内の対北朝鮮政策や、海外からのアプローチ方法についても議論を呼ぶ可能性があります。