M-1グランプリ2023王者、令和ロマンの髙比良くるま氏。テレビ出演を控える発言や、王者として再びM-1に挑戦するなど、その独自の姿勢が注目を集めています。初著書『漫才過剰考察』では、M-1や漫才そのものについて深く掘り下げた考察を展開。本記事では、同書からくるま氏の漫才観を読み解き、現代漫才の現状と未来について考えていきます。
M-1と寄席漫才の乖離
くるま氏は著書の中で、M-1グランプリを目指す「競技漫才」と、寄席などで披露される「万人受けする漫才」の乖離について指摘しています。
本来学ぶべき漫才の順番
一般的には、お笑いに馴染みのない観客を笑わせる「シンプルな漫才」を習得した上で、お笑い好きに向けた「複雑な漫才」に挑戦するのが自然な流れと言えるでしょう。しかし、現在の若手芸人の多くは、M-1グランプリを目標に「競技漫才」を優先的に学ぶ傾向にあります。
令和ロマン・髙比良くるま氏
M-1ブームが生んだ変化
M-1グランプリの人気の高まりは、お笑い界に大きな変化をもたらしました。かつては、地方営業などで経験を積み、実力を磨いてからテレビ出演を目指すのが主流でしたが、現在ではM-1グランプリでの活躍がテレビ出演への近道となっています。
この風潮は、各事務所の養成所にも影響を与え、「M-1対策」に重点を置いた指導が行われるようになっています。漫才師育成の現場で、寄席漫才の指導が軽視されている現状が浮き彫りになっています。
寄席漫才の継承の難しさ
寄席では、ベテラン芸人による「背中で語るスタイル」の指導が中心となっています。言葉で丁寧に指導するのではなく、若手芸人は先輩の舞台を見て学ぶという伝統的な方法がとられています。しかし、この方法では、寄席漫才の技術やノウハウが体系的に伝承されにくいという課題があります。
漫才界の未来への提言
くるま氏は、M-1グランプリと寄席漫才の融合の必要性を訴えています。漫才師は、競技漫才だけでなく、幅広い層に受け入れられる漫才を習得することで、真のエンターテイナーへと成長できるはずです。
漫才界の未来のためには、若手芸人が様々な舞台で経験を積み、多様な漫才の技術を磨ける環境づくりが不可欠です。漫才の裾野を広げるためには、M-1グランプリだけでなく、寄席漫才の価値も見直されるべきではないでしょうか。
まとめ:多様な漫才の共存を目指して
令和ロマン髙比良くるま氏の『漫才過剰考察』は、現代漫才の現状と課題を鋭く分析した一冊です。M-1グランプリと寄席漫才の融合、そして多様な漫才の共存こそが、漫才界のさらなる発展につながるのではないでしょうか。