バングラデシュで建設中の初の原子力発電所をめぐり、巨額の横領疑惑が浮上し、波紋を広げています。暫定政権の汚職防止委員会は、シェイク・ハシナ前首相らが7600億円を超える資金を不正に取得した疑いがあるとみて調査に乗り出しました。本記事では、事件の背景や今後の展開について詳しく解説します。
ロシア支援の原発事業に不正疑惑
バングラデシュ西部ルプールで建設が進められている同国初の原発は、ロシアからの巨額融資を受けて実現した国家プロジェクトです。2024年の稼働開始を目指し、総事業費は約2兆円に上ります。しかし、この一大プロジェクトの裏で、巨額の資金が不正に流用されていた可能性が浮上しています。
バングラデシュ暫定政権の汚職防止委員会は、ハシナ前首相を中心とする関係者が、約7672億円もの公的資金を横領した疑いがあるとみて調査を開始しました。疑惑の発端は、マレーシアの銀行に開設された非居住者向け口座を利用した不正送金に関する告発です。委員会は、原発建設における資材調達などの過程を徹底的に調べ、不正の全容解明を目指しています。
altバングラデシュ初の原発建設計画。ロシアの支援を受け、2024年の稼働開始を目指していたが、巨額の横領疑惑が浮上し、計画の行方が不透明になっている。
ハシナ前首相の身柄引き渡し要請へ
汚職疑惑の渦中にあるハシナ前首相は、抗議デモの高まりを受け、今年8月に辞任に追い込まれました。現在はインドに滞在しており、バングラデシュ暫定政権は身柄の引き渡しをインド政府に要請しています。バングラデシュの裁判所は10月、「人道に対する罪」の容疑でハシナ前首相に逮捕状を発付しており、今後の裁判への出廷を求めています。
今回の原発建設をめぐる不正疑惑は、バングラデシュの政治経済に大きな影響を与える可能性があります。今後の捜査の進展次第では、政界のさらなる混乱も予想されます。
原発事業の未来は不透明
バングラデシュにとって初の原発は、慢性的な電力不足の解消に大きく貢献すると期待されていました。しかし、今回の不正疑惑により、原発事業の将来は不透明な状況に陥っています。国民の電力供給への不安が高まる中、暫定政権は難しい舵取りを迫られています。
altシェイク・ハシナ前首相。原発建設に関連した横領疑惑で捜査対象となり、インドへの出国を余儀なくされた。
不正疑惑の全容解明、ハシナ前首相の責任追及、そして原発事業の今後など、多くの課題が残されています。今後の動向に注目が集まります。