韓国ウォンが米ドルに対して急落し、一時1ドル=1460ウォン台まで値下がりしました。これは2009年の世界金融危機以来のウォン安水準となり、韓国経済への影響が懸念されています。本記事では、ウォン急落の背景と今後の見通しについて解説します。
ウォン安の要因:複雑に絡み合う国内外の情勢
ウォン安の背景には、複雑に絡み合う国内外の要因が挙げられます。
国内政治の不安定さ
24日のソウル外国為替市場では、ウォンは前日比4.4ウォン安の1ドル=1456.4ウォンで取引を終え、今年の最安値を更新。ハン・ドクス大統領権限代行の弾劾の可能性が報じられたことで、政治的な不安定さが増し、ウォン売りが加速したとみられています。
韓国ウォンの為替レート表示
世界的なドル高基調
世界的にドル高が進行していることも、ウォン安に拍車をかけています。米国の好景気や金利上昇を背景に、世界の投資家がドル建て資産に資金を集中させているためです。JPモルガンのエマージングマーケット通貨指数は今年9.7%下落しており、ウォンだけでなく他の新興国通貨も苦戦を強いられています。
トランプ政権の政策不確実性
トランプ前大統領の再選と、それに伴う保護貿易政策への懸念もウォン安の要因となっています。関税引き上げなどの政策によって、韓国経済への悪影響が懸念されているためです。
新興国通貨の動向:メキシコ、ブラジルも苦境
韓国だけでなく、他の新興国通貨も厳しい状況に置かれています。ブラジルレアルは年初来で対ドル25%下落し、メキシコペソも心理的抵抗線である1ドル=20ペソを突破しました。これらの国々では、通貨安を防ぐために中央銀行が市場介入を行うなどの対策を講じていますが、効果は限定的です。
中国経済の減速
世界経済の減速、特に中国経済の減速も新興国通貨の下落圧力となっています。中国は多くの新興国にとって重要な貿易相手国であるため、中国経済の減速は新興国の輸出に悪影響を及ぼします。
今後の見通し:専門家の意見は?
専門家の間では、今後のウォン相場について悲観的な見方が広がっています。新韓銀行エコノミストのペク・ソクヒョン氏は、「来年もすべての通貨に対してドル高が続くだろう」と予測。iM証券エコノミストのパク・サンヒョン氏は、「米国の利下げサイクルが中断し、トランプ政権の関税戦争が本格化した場合、1994年のメキシコ通貨危機のような事態が起きる可能性もある」と警鐘を鳴らしています。
ウォン安の影響と対策
ウォン安は、輸入物価の上昇を通じてインフレーションを招く可能性があります。また、企業の収益を悪化させ、経済成長を阻害するリスクも懸念されています。韓国政府は、ウォン安への対策として、金融政策の調整や為替介入などを検討する必要があるでしょう。今後の動向に注目していく必要があります。