高橋まつりさんが過労により自ら命を絶ってから9年が経ちました。大手広告代理店電通に新卒入社したまつりさんは、当時わずか24歳でした。この悲しい出来事を契機に、過労死問題への社会的な関心が高まりました。母親の幸美さんは手記を公表し、改めて過労死根絶への強い願いを訴えています。
9年目のクリスマス、変わらぬ母の想い
今年もまつりのいないクリスマスを迎えた幸美さん。12月は、まつりを助けられなかったあの日を思い出し、心がざわつく日々が続くといいます。電通過労死事件の記憶が薄れていっても、まつりはかけがえのない娘であり、その存在は永遠に消えることはありません。
alt
まつりさんの入社当時と、失われた未来への想い
2015年、希望に満ち溢れて電通に入社したまつりさん。新入社員研修での活躍、ラジオ放送でのアイデア採用、プレゼンでの優勝など、喜びの声を電話で伝えてくれた当時の様子が、幸美さんの記憶には鮮明に残っています。もし生きていれば、今年で入社10年目の節目を迎えていたまつりさん。充実した人生を送り、未来への夢を描いていたであろう姿を想像し、幸美さんは深い悲しみを募らせています。
企業の責任と過労死防止への取り組み
電通は過労死の再発防止に取り組んでいますが、幸美さんは、長時間労働を強いられる社員に対して企業がどのような対策を講じるべきかを真剣に考えることが重要だと指摘しています。長時間労働は、知らず知らずのうちに病気を引き起こす危険性が高いことを、企業は決して忘れてはならないと訴えています。
過労死等防止対策推進法施行から10年、それでも続く過労死
過労死防止を国の責務と定めた「過労死等防止対策推進法」の施行から10年が経過しました。しかし、長時間労働による精神疾患の発症は後を絶たず、2023年度の労災認定者数は過去最多の883人(うち自殺・自殺未遂79人)に上っています。
国への要望と、まつりさんと共に歩む決意
国の協議会委員として過労死対策を議論する幸美さんは、こうした現状を踏まえ、国に対し遺族の声に真摯に耳を傾け、対策の見直しを求めています。誰もが安心して働き、希望を持って人生を送れる国の実現を願い、まつりさんと共に力を尽くしていく決意を改めて表明しています。
幸美さんの手記全文
以下は、幸美さんが公表した手記の全文です。
まつりがいない9回目のクリスマス。12月はいつも心がざわざわします。言葉で表すのは難しいですが、まつりを助けられなかったあの日が近づくからです。たとえ「電通過労死事件」が人の記憶から消えても、どんなに時が過ぎても、まつりは大切な愛しい娘。一生忘れることはありません。
2015年、まつりは希望を持って電通に入社しました。新入社員研修でアイデアが採用されてラジオで放送されたことや、研修の最後のプレゼンで優勝したことを嬉しそうに電話してきたことが昨日のことのようです。