日本の地方都市では、深刻な人手不足が大きな課題となっています。少子高齢化の進展に伴い、働き手不足はますます深刻化しており、企業は生き残りをかけて様々な対策を講じています。この記事では、地方の中小・中堅企業がどのように人材確保に取り組んでいるのか、具体的な事例を通して紐解いていきます。
地方企業が直面する人材不足の現実
地方都市の中小・中堅企業は、若者の都市部への流出や高齢化の加速により、深刻な人材不足に直面しています。特に建設業、サービス業、卸・小売業といった業界では、その影響が顕著に見られます。これらの企業は、限られた人材プールの中で優秀な人材を確保するために、従来の雇用慣行を見直し、新たな戦略を模索しています。
90年以上の歴史を持つ建設会社の挑戦
創業90年を超える老舗建設会社は、公共工事を中心に事業を展開してきました。しかし、建設業界は長時間労働や低賃金といったイメージが根強く、若者からの敬遠が続いています。そこで同社は、人材確保のために労働条件の抜本的な改善に着手しました。
完全週休2日制の実現
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以前は年間休日100日程度でしたが、5年かけて121日まで増やし、完全週休2日制を実現しました。担当者によると、「今の若い人は休日の数を非常に気にしています。少ないと就職先の候補から外れてしまいます」とのこと。高校生の採用活動において、休日数の重要性は非常に高く、企業にとって無視できない要素となっています。
大幅なベースアップの実施
高卒の初任給は5年前の約16万円から18万5000円まで引き上げられました。若手社員の給与もそれに連動して引き上げ、人材の定着を図っています。人事戦略コンサルタントの山田氏(仮名)は、「若年層の獲得競争が激化する中、賃金アップは必須と言えるでしょう。特に地方企業は、都市部の企業と比べて賃金面で不利な立場にあるため、大胆なベースアップが求められます」と指摘しています。
除雪作業におけるアルバイトの時給上昇
建設会社は、冬期の除雪作業に農家の方をアルバイトとして雇用しています。このアルバイトの時給も近年、15%程度上昇しています。企業間のアルバイトの取り合いが激化しており、時給の上昇圧力が高まっているのです。
労働条件改善の波及効果
この建設会社の取り組みは、他の企業にも波及しつつあります。地域全体で労働条件が改善されることで、人材の流出を防ぎ、地域経済の活性化につながることが期待されています。
まとめ:人材確保に向けた持続的な努力
地方企業は、人材不足という大きな課題に直面しながらも、様々な工夫を凝らして人材確保に尽力しています。完全週休2日制の導入や大幅なベースアップは、その代表的な例と言えるでしょう。これらの取り組みは、単に人材を確保するだけでなく、従業員のモチベーション向上や企業イメージの向上にもつながり、企業の持続的な成長を支える重要な要素となっています。