【コラム】シリア独裁政権崩壊が北朝鮮に与える衝撃


シリアは北朝鮮のいくつも残っていない長い友好国だった。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とアサドは定期的に書簡を交わした。2023年末に北朝鮮が多くの海外公館を撤収した当時も、ダマスカスの7階建て北朝鮮大使館の建物は健在だった。しかしシリアの新政権はアサド政権とは違い、北朝鮮にそれほど友好的でない。海外公館ネットワーク縮小という決定に続いて起きたアサド政権の没落は、北朝鮮の外交力に大きな打撃を与えた。

もう北朝鮮政権の不安な目はもう一つの友好国イランに向かっている。経済悪化、2年前の全国的デモ、中東の親イラン勢力没落、イスラエルの攻撃への対応失敗、アサド政権の没落で孤立したイランも、いざという時には崩壊するかもしれないという懸念のためだ。

その場合、もう北朝鮮に残された友好国は中国とロシアだけだ。朝中関係は親ロ密着の動き以降は冷え込み、有事の際、果たして中国がどこまで北朝鮮を支援するかは疑問だ。2019年の軍部クーデターで追放されたスーダンのオマル・バシル大統領と2011年の大規模デモの中で殺害されたリビアのカダフィ大佐の没落の事例に見られるように、中国は友好国が危機に直面すると容赦なく手を切った履歴があるからだ。

今回、ロシアも危機に直面した友好国を捨てた。1980年に旧ソ連とシリアが締結した友好条約第6条に基づくと、ロシアは安保の脅威からシリアを守るために協力しなければならない。しかしロシアはアサド政権の没落を招いた反乱勢力の基地を一部爆撃したものの、戦勢が不利になると軍の撤収に集中した。

6月に朝ロ条約が締結された当時、北朝鮮政権は朝ロ同盟が北朝鮮の安保問題をすぐに解決してくれると信じたはずだ。条約に明示された相互軍事支援は旧ソ連とシリアの条約よりはるかに明確だ。しかし実際の有事の際どれほど異なる結果につながるかは分からない。北朝鮮は確信しているが、シリア事態を見ても果たしてそうだろうか。

強く信じた安保協力国に対する確信が揺らげば北朝鮮は軍隊により一層頼るしかない。ところがアサド政権の崩壊は北朝鮮に示唆する点が多い。アサド政権は反乱軍の力が強いからではなく、誰もアサド政権を守らなかったために没落した。イランとロシアも動かず、シリア軍は力なく崩れた。少ない軍人の月給と補給品、蔓延した腐敗で士気が落ちたシリア軍はアサド政権の豪華な生活を見て怒った。このように北朝鮮指導部は政権が危機を迎えた時、軍隊がどう行動するかを心配しているはずだ。

北朝鮮政権にはロシア派兵も負担だ。派兵初期には外国に出られるという考えで浮き立つ軍人もいたが、厳しい環境と死傷者急増で派兵された北朝鮮軍は怒りに包まれているという。シリアの事例に見られるように、北朝鮮軍のロシア派兵は特別な所得がなければ代償が大きい。

これだけで終わらない。ロシアは来年1月のトランプ大統領の就任まで最大限多くのウクライナ領土確保のために北朝鮮軍の追加派兵を要求するだろう。北朝鮮はトランプが就任すればウクライナ戦争がすぐに終息し、追加派兵をしなくてもよいという希望を抱いているかもしれない。しかしプーチン大統領は勝利を強く信じて平和交渉には関心がない。平和交渉の努力が実らなければトランプ政権はウクライナに武器を引き続き支援するはずであり、戦争は続くしかない。

何よりも経済的に大きくロシアに依存している北朝鮮はロシアの追加派兵要求を拒否する立場ではない。北朝鮮の立場ではまさに進退両難だ。北朝鮮の指導部はこのすべての状況に対応する能力が不足するとみられる。

ジョン・エバラード/元駐平壌英国大使

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