「ディズニーランドでリモワ」するバカ社員の末路…待ち時間で電話や資料作成をこなしてもNGな理由


 リモートワークはルールにあいまいな部分もあり、どこまでがOKで、どこからがNGか、判断に悩むことも多いでしょう。

【図表】リモートワーク・ワーケーションがOKかどうかは業務環境による

 たとえば、「働く場所はどこでもいいのか」。そもそも企業と社員は、雇用契約を結んだうえで仕事をし、給料を受け取っています。言い換えれば「自分の時間を企業に売っている」ことになります。給料は仕事の「成果」に対してではなく、「時間」に対して支払われています。また、労働契約法第3条4項では職務専念義務(業務時間中は職務に専念する義務)が定められており、雇用契約が成立している以上は、いつでも仕事の電話に対応したり、上司の指示する資料の作成がすぐにできる状態になければなりません。これは、働く場所がオフィスであろうと、自宅であろうと変わりません。

 「PCがあればどこでも作業できる」と考える人も多いと思いますが、「働く場所はどこでもいい」と許されているわけではありません。たとえば東京ディズニーランドへ行き、アトラクションの待ち時間に電話対応や資料作成をした場合はどうでしょうか。

 ある程度の仕事はできたとしても、アトラクションに乗っている数分間は「業務ができない」状態になります。このケースは職務専念義務に違反すると考えられます。アトラクションに一切乗らないとしても、「スマホで写真を撮る」「パーク内のカフェで店員さんにコーヒーを注文する」など、仕事の電話に対応できない時間が発生する場合は、「職務に専念できていない」と見なされます。このような状況が生じる環境に身を置くこと自体が許されないのです。同じ「電話に出られなかった」でも、トイレ休憩で対応できなかったのとは事情が違うと判断されます。

 実際にリモートワークを実施している企業は、どこで仕事をしてよいか、就業形態を「テレワーク就業規則」(在宅勤務規定)で定めているはずです。厚生労働省が示している「テレワークモデル就業規則」では、「在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)において情報通信機器を利用した業務をいう」とされています。これに準ずる就業規則があるとすれば、自宅以外で仕事をする場合には、企業が認める場所でなければなりません。ディズニーランドでの仕事は認められないでしょう。

 裁量労働制で働く人が勤務日にディズニーランドに行くのも認められません。裁量労働制とは本来、デザイナーなどクリエーティブ系の職種の社員が業務時間に縛られずに思考を巡らせ、質の高いアウトプットを生み出すための制度です。「勤務時間に何をしてもよい」という制度ではありません。勤務日は、仕事の電話やメールに対応できる状態でなければならないのです。

 一方、ワーケーションを取り入れる企業も増えています。リゾート地などで仕事と休暇を両立させる制度ですが、働く場所が「どこの県、どこの国でもOK」というだけで、すぐにメールをしたり電話に対応できる環境であることが大前提です。ワーケーションを実施している企業の場合、「就業は室内で」と労働環境を定めているところも多くあります。

 「ディズニーランドで仕事をしてもバレないんじゃないか?」と考える人もいるかもしれません。しかし、企業が支給しているスマホのGPS機能などを利用して、社員を監視することは、業務時間内であれば合法です。もし、GPSデータで勤務中にディズニーランドに行っていることが判明すれば、職務専念義務違反となり、懲戒処分となる可能性があります。加えて多くの人が集まる場所で仕事をすると、情報漏洩のリスクが高まり、さらに重い懲戒処分の対象になります。

 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。

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向井 蘭(むかい・らん)
弁護士、杜若経営法律事務所
1975年生まれ。東北大学法学部卒。2003年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2009年狩野・岡・向井法律事務所(現・杜若経営法律事務所)パートナー弁護士。経営法曹会議会員(使用者側の労働事件を扱う弁護士団体)。主に使用者側の労働事件を担当。労働法務を専門とし、解雇、雇止め、未払い残業代、団体交渉、労災など、使用者側の労働事件を数多く取り扱う。著書に『改訂版 書式と就業規則はこう使え!』(労働調査会)、『管理職のための ハラスメント予防&対応ブック』(ダイヤモンド社)など多数。
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弁護士、杜若経営法律事務所 向井 蘭



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