家族の中に精神疾患を抱える人がいる時、どうすればいいのか?映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症を発症した姉と、それを認めなかった両親との20年間の記録を通して、この難しい問いに向き合っています。この作品は、監督自身の家族の物語であり、”失敗例”として提示することで、私たちに多くのことを考えさせてくれます。
1992年、録音された姉の叫び声
映画は、暗闇の中、1分間にわたる女性の絶叫から始まります。これは1992年、監督である藤野知明氏が大学生だった頃に録音した、統合失調症を発症した姉の声です。「どうして家から分裂病が出なきゃなんないの!」「あんた本当にひどい人だね!」— 悲痛な叫びは、観る者の心を掴みます。
北大農学部時代の藤野監督
姉の異変は、監督が17歳の時に初めて現れました。医大生だった姉は、突然、支離滅裂な言葉を30分以上も叫び続けたのです。救急車を呼び、病院へ連れて行きましたが、医師は「全く問題ない」と診断。両親も姉の行動を「両親への反抗」と解釈し、病気であることを認めようとしませんでした。
長引く葛藤と悪化する症状
家族は、姉の症状を認めようとせず、時間は過ぎていきました。監督自身も、将来自分が同じ病気になってしまうのではないかという不安を抱えながら、大学生活を送っていました。周囲に相談しても理解されず、「そんなこと気にするな」と片付けられることも多かったといいます。
しかし、大学の近くの居酒屋のご夫婦だけは、監督の話をじっくりと聞いてくれました。この経験は、後に監督がドキュメンタリー制作に携わる上で、大きな影響を与えたそうです。
一方、姉の症状は悪化の一途を辿ります。受験勉強ができない状態にも関わらず、父親は参考書を買い続け、姉は110番通報を繰り返すようになりました。映画では、一般的には異常と捉えられる光景が、家族にとっては「当たり前の風景」として映し出されます。
家族の”普通”と社会の”普通”の乖離
精神疾患の理解不足は、家族内での認識のズレを生み出し、適切な治療の機会を奪ってしまうことがあります。精神医療の専門家である山田先生(仮名)は、「家族が病気のサインを見逃してしまうケースは少なくありません。早期発見・早期治療が重要であるため、少しでも異変を感じたら専門機関に相談することが大切です」と指摘しています。
ドキュメンタリー映画が投げかける問い
25年後、ようやく姉は適切な治療を受けることができました。しかし、監督は「もっと早くどうすればよかったのか」という自問自答を繰り返します。この映画は、家族の葛藤を赤裸々に描くことで、私たちに「どうすればよかったのか?」という問いを投げかけています。統合失調症という病気への理解を深め、早期発見・早期治療の重要性を訴えるとともに、家族のあり方、そして社会の在り方について、深く考えさせる作品となっています。
私たちにできること
この映画は、決して他人事ではありません。身近な人が精神的な困難を抱えている時、私たちはどうすればいいのか?まずは、偏見を持たずに、相手の話をじっくりと聞くことが大切です。そして、必要に応じて専門機関への相談を促すことも重要です。「jp24h.com」では、今後も様々な社会問題を取り上げ、読者の皆様と共に考えていきたいと思っています。