【主張】熊本城の公開 輝く天守を復興の旗印に


 平成28年4月の熊本地震で被災した熊本城が5日から、3年半ぶりに一部公開された。

 大天守の外観修復が終わり、壮麗な姿を眺められる特別公開ルートが設けられた。同日から「くまもとお城まつり」が始まるのに合わせたもので、6日と13日にはラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会も熊本市で開催される。公開は日時限定だが、国内外に“復興のシンボル”復活をアピールしてもらいたい。

 熊本城は慶長12(1607)年、築城の名手で知られる戦国武将、加藤清正によって築かれた。日本三名城の一つで知られる。明治10(1877)年の西南戦争で天守や本丸御殿が焼失した。現在の大小天守閣は昭和35年に再建された鉄筋コンクリート造りだ。

 史上初めて震度7を2度観測した熊本地震では、甚大な被害を受けた。天守閣の瓦は落ち、崩れた石垣の映像には地元ならずとも心を痛めた人は多かっただろう。

 熊本市は地震直前の状態に戻すことを原則に復旧計画を進めている。その中で最優先としたのが天守閣の復旧だった。城下町の人々にとって「お城」はただの文化財ではない。地域の誇りであり、どこからでも望める天守閣は心のよりどころでもあるからだ。

 地震以降、大小の天守がある本丸への立ち入りは規制されてきた。今回の特別ルートは、券売所のある二の丸広場から、工事用スロープを通って天守閣前広場に至る約450メートルを歩く。「第三の天守」と呼ばれる「宇土櫓(うとやぐら)」(国の重要文化財)、石垣を積み直した大天守とまだ足場に覆われた小天守を仰ぎ見ることができる。

 ただ、内部は工事中で、入れるようになるのは令和3年春になる見通しだ。エレベーターも設置するなどバリアフリー化にも取り組む。公開しながら観光客らに被害と復旧過程を見てもらうことにも意義がある。全ての工事が終わるのは19年ごろの見通しだ。

 近年の“お城ブーム”もあって城郭は強力な観光資源である。中でも特徴的な建築物の天守閣はいわば城の顔だ。今回、大天守は塗り直した白いしっくいと黒い壁のコントラストが見どころだという。熊本県によると8月末で約8千人以上が仮設住宅などで生活している。輝きを取り戻した熊本のシンボルを旗印に、復興への歩みを着実に進めてほしい。



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