能登半島地震を教訓に:日本海側海底活断層、地震・津波想定のズレが明らかに

日本海に潜む海底活断層による地震と津波の想定に、自治体間で大きなズレがあることが毎日新聞の調査で明らかになりました。2024年1月の能登半島地震を契機に、この問題は改めて注目を集めています。本記事では、現状の課題と今後の対策について詳しく解説します。

海底活断層想定の現状:地震と津波、どちらを重視?

毎日新聞が日本海沿岸16道府県に行ったアンケート調査によると、海底活断層による被害想定に6道県で食い違いが見られました。4県は「津波のみ」を想定、北海道は「地震のみ」と回答、石川県は「両方」としながらも、地震と津波で想定している活断層が異なっていました。

能登半島沖で撮影された海底の段差。能登半島地震でできた可能性がある。能登半島沖で撮影された海底の段差。能登半島地震でできた可能性がある。

この背景には、2014年に国土交通省などが公表した日本海側海底活断層調査(F01~F60)があります。能登半島地震の震源とされる「F43断層」もこの中に含まれていました。国は「最大クラスの津波被害を想定する」よう指針を出したため、各道府県は津波被害想定を地域防災計画に盛り込みました。

しかし、地震の揺れに関する国の指針はなく、対応が分かれたのです。10府県は地震の揺れも防災計画に含めましたが、残りの県は反映させていませんでした。例えば、秋田県は独自にプレート境界型地震を想定、長崎県は確実な活断層のみを想定しており、海底活断層は含まれていないと回答しています。

能登半島地震の教訓:想定のズレが被害拡大につながる

能登半島地震では、石川県が想定していた津波を引き起こす活断層とは別の海底活断層が震源となり、地震の揺れによる被害想定が過小評価されていました。この教訓から、想定のズレが被害拡大に繋がる危険性が浮き彫りになりました。

2024年1月に発生した能登半島地震の断層モデル2024年1月に発生した能登半島地震の断層モデル

名古屋大学名誉教授(地震工学)の福和伸夫氏は、「地域防災計画の策定は都道府県に委ねられているため、想定に幅や温度差が生じる。想定のズレや見直しの遅れは、能登半島地震のように被害の過小評価に繋がりかねない」と警鐘を鳴らしています。

今後の対策:想定の見直しと情報共有が不可欠

今回の調査結果を受け、石川、富山、長崎の3県は被害想定の見直しを表明。福岡県も予備調査結果を踏まえて検討するとしています。

想定の見直しだけでなく、自治体間、そして国との情報共有も重要です。海底活断層に関する最新の研究成果を共有し、より精緻な被害想定を作成することで、将来の地震・津波災害への備えを強化していく必要があります。

専門家の声:海底活断層研究の第一人者、東京海洋大学 A教授(仮名)の見解

「日本海側の海底活断層については、まだ解明されていない部分も多い。継続的な調査と研究、そしてその成果を迅速に防災計画に反映させることが重要だ。特に、地震と津波の両面からのリスク評価を行い、地域住民への周知徹底を図る必要がある。」

より安全な社会の実現のためには、今回の調査結果を真摯に受け止め、迅速かつ的確な対策を講じることが求められています。