ユン大統領逮捕状執行、5時間半の攻防劇の末に中止

大統領府への道、警護処との緊迫の対峙。ユン・ソクヨル大統領の逮捕状執行をめぐり、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と大統領警護処が5時間半にわたる攻防を繰り広げました。この記事では、緊迫した現場の様子やその背景にある複雑な事情を詳しく解説します。

逮捕状執行の開始と大統領府への道のり

2025年1月3日午前6時14分、公捜処の捜査チーム約20名は、京畿道果川市の政府果川庁舎を出発。内乱首魁容疑で逮捕状が出ているユン大統領の身柄確保に向け、大統領官邸を目指しました。7時19分、ソウル龍山区漢南洞の大統領官邸の入口に到着した捜査チーム。しかし、車両での立ち入りを拒否され、約40分間待機することに。8時2分、ようやくバリケードが開かれ、徒歩での立ち入りが許可されました。この時、公捜処は報道機関に「ユン大統領に対する逮捕状執行を開始した」と発表しました。

大統領官邸前で対峙する警察と警護処職員大統領官邸前で対峙する警察と警護処職員

警護処による徹底的な阻止と公捜処の執念

大統領官邸までは、入口からさらに500メートル以上。しかし、捜査チームの行く手には、警護処による幾重もの阻止線が張られていました。最初の阻止線では、軍部隊の人員を含む50名ほどの警護処職員が道を封鎖。警護処次長は「警護法に基づいて警護している。逮捕状は判断が困難」と主張し、捜査チームの進行を阻みました。しかし、捜査チームは「執行しなければならない」と譲らず、約40~50分の対峙の末、最初の阻止線を突破しました。

幾重にも張り巡らされた阻止線と山道迂回

突破後も、警護処は軍用車両やバスなど10台以上で道を塞ぎ、第二の阻止線を構築。突破は不可能と思われましたが、捜査チームは横の山道を迂回するという奇策を用いて、この阻止線をも突破しました。

緊迫の最終局面と執行中止の決断

官邸まであと150メートル。しかし、そこで捜査チームを待ち受けていたのは、200名を超える警護処職員による人間の壁でした。公捜処の捜査チームは約100名。狭い場所に数百人が密集し、負傷者が出る危険性も高まる中、3人の捜査検事が大統領側の弁護人と接触を試みました。しかし、弁護人側は「捜査権のない機関が発行した令状には応じられない」と主張。最終的に、公捜処は午後1時30分、逮捕状執行の中止を決定しました。

執行中止の背景と今後の展開

公捜処は、執行中止の理由として「現場の人員の安全が懸念される」と説明。複数の阻止線を突破する過程で、大小の小競り合いが発生し、一部の警護員は個人火器を所持していたとのこと。韓国憲法裁判所の元研究官であるキム・ジョンデ氏(仮名)は、「今回の事態は、大統領の権限と捜査機関の権限の衝突という、極めてデリケートな問題を浮き彫りにした」と指摘しています。今後の捜査の行方、そして韓国政界への影響に注目が集まります。