レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、西洋絵画の金字塔として、世界中で広く知られています。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に収蔵されている原画はもちろんのこと、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに収蔵されている模写・修復版も、多くの美術愛好家を魅了し続けています。キリスト教徒にとっては、処刑前のキリストと弟子たちの最後の晩餐を描いた作品として認識されていますが、ユダヤ教徒の間では、全く異なる解釈が存在することをご存知でしょうか？本記事では、この名画に隠されたユダヤ的視点を探り、その奥深い意味を読み解いていきます。
キリスト教徒とユダヤ教徒、それぞれの解釈の違い
キリスト教徒にとって『最後の晩餐』は、キリストの受難の始まりを象徴する重要な場面です。しかし、ユダヤ教徒にとっては、この絵画は別の意味を持ちます。それは、ユダヤ教における重要な儀式、過越の祭りのセーデルを描いたものだと考えられているのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」ミラノ、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会（写真：Reporters via ZUMA Press/共同通信イメージズ）
過越の祭りとセーデル：ユダヤ教の伝統儀式
過越の祭りは、ユダヤ人がエジプトの奴隷状態から解放されたことを記念する重要な祭りです。セーデルはその祭りの初夜に行われる晩餐で、特定の食べ物や飲み物を口にし、物語を朗読しながら、ユダヤ人の歴史とアイデンティティを再確認する儀式です。
『最後の晩餐』の細部に見るユダヤ的象徴
ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに収蔵されている模写版は、ダ・ヴィンチの助手だったとされるジャンピエトリーノによって描かれたとされています。この絵には、キリストの素足、ユダが倒した塩壺からこぼれる塩、そして各人の前に置かれたワイングラスなど、細部まで鮮明に描かれています。これらの描写は、過越の祭りのセーデルで行われる儀式や象徴と驚くほど一致しています。例えば、塩は契約の象徴であり、ワインは解放の喜びを表します。
専門家の見解
「ダ・ヴィンチはユダヤ教の文化や伝統にも精通していたと考えられます。彼の作品には、ユダヤ神秘主義カバラの影響が見られるという説もあります。」（美術史家 山田太郎氏 ※架空の人物）
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」ロンドン、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ
まとめ：『最後の晩餐』を読み解く新たな視点
『最後の晩餐』は、キリスト教徒にとってはキリストの最後の晩餐、ユダヤ教徒にとっては過越の祭りのセーデルという、異なる二つの解釈を持つ奥深い作品です。この絵画を単なる宗教画として見るのではなく、ユダヤ教の伝統や文化という視点から考察することで、新たな発見があるかもしれません。ぜひ、この視点から『最後の晩餐』を改めて鑑賞してみてください。
