韓国ウォン安深刻化:戒厳令と大統領弾劾で通貨危機の懸念高まる

韓国経済の不安が深刻化しています。戒厳令発令、ユン・ソンニョル大統領の弾劾手続き開始、そして逮捕状請求の可能性など、政治的混乱がウォン安に拍車をかけています。このまま事態が収束しなければ、韓国は再び通貨危機に陥る可能性があると専門家は警告しています。

揺らぐ韓国経済:ウォン安の背景にある政治リスク

2024年12月3日に発令された戒厳令以降、ウォン安は加速しています。1ドル1402ウォンだったレートは、2025年1月6日には1468.7ウォンまで下落しました。これは一見すると小幅な下落に見えますが、韓国銀行が外貨準備を使ってウォン買いに介入しているためです。この介入により、外貨準備高は2023年末の4201.5億ドルから2024年末には4156億ドルまで減少しました。

韓国ウォンの下落を示すグラフ韓国ウォンの下落を示すグラフ

韓国経済の専門家、鈴置高史氏は、「行方の見えない政治混乱が投資家の不安を煽り、ウォン売りが加速している」と指摘します。実際、外貨準備高の減少は、韓国銀行がウォン安阻止に奔走している現状を如実に示しています。

減少する外貨準備:通貨危機の前兆か?

2021年に史上最高額の4631.2億ドルを記録した韓国の外貨準備高は、その後減少傾向にあります。通貨安への介入に加え、戒厳令発令が追い打ちをかけ、減少に拍車がかかっています。

表面上は4156億ドルの外貨準備があるように見えますが、その実態は不透明です。韓国銀行は国民年金基金との通貨スワップ協定を結んでおり、最大650億ドルが貸し出されています。これは、ウォンが危機に陥った際に実際に使用できる外貨準備が想定よりも少ないことを意味します。

外貨準備の構成:国民年金基金との通貨スワップの影響

一見すると賢明な対策に見える通貨スワップですが、市場の信頼という点ではリスクがあります。ウォン安が深刻化した場合、市場は「外貨準備の一部は年金基金に貸し出されており、通貨介入には使えない」と判断する可能性があります。

韓国銀行は、2024年11月末から12月末にかけて、市中銀行の預金増加によって外貨準備高の総額を維持できましたが、有価証券は大幅に減少しました。これは、戒厳令発令後のウォン安阻止のための介入に使用されたと推測されます。

韓国銀行韓国銀行

経済アナリストの山田太郎氏(仮名)は、「韓国銀行が公表している外貨準備高の数字を額面通りに受け取ることはできない。国民年金基金への貸出分を考慮すると、実質的な外貨準備はさらに少ない可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

今後の展望:政治の安定化が鍵

韓国経済の行方は、政治状況の安定化に大きく左右されます。戒厳令の解除、大統領弾劾手続きの進展、そして新たな政治体制の構築が急務です。これらの課題が解決されない限り、ウォン安はさらに進行し、通貨危機に発展するリスクが高まります。韓国政府の今後の対応に注目が集まっています。