中国の宇宙開発戦略:アタカマ砂漠の天文台から読み解く覇権への野望

中国の宇宙開発における野心的な取り組みは、月や火星といった深宇宙探査だけでなく、地球上の戦略的な拠点構築にも及んでいる。その象徴的な例が、南米チリのアタカマ砂漠に建設された天文台だ。この記事では、アタカマ砂漠の天文台を起点に、中国の宇宙戦略、そしてその背後に潜む真の狙いを紐解いていく。

アタカマ砂漠:宇宙覇権への布石?

標高2000メートル、アンデス山脈にほど近いアタカマ砂漠。乾燥した岩だらけのこの地は、天体観測に最適な場所として知られている。中国はここに天文台を建設し、地球を周回する衛星や宇宙ステーションの観測、さらには新天体の発見を目指している。しかし、専門家の中には、この天文台が中国の軍事目的にも利用される可能性を指摘する声もある。

アタカマ砂漠の望遠鏡アタカマ砂漠の望遠鏡

習近平政権の描く「宇宙強国」構想

習近平国家主席は、2049年の建国100周年までに中国を世界の頂点に立たせるという壮大なビジョンを掲げている。その実現に向け、宇宙開発は重要な鍵を握っている。アタカマ天文台のような施設は、中国の宇宙覇権確立のための戦略的拠点の一つと言えるだろう。特に南米は、中国が宇宙インフラを積極的に展開する地域であり、その戦略的な重要性は無視できない。

科学研究の仮面を被った軍事利用?

中国側は、アタカマ天文台は純粋な科学研究施設であり、国際的な協力にも開かれていると主張している。しかし、元米国家安全保障会議(NSC)中国担当部長ライザ・トビン氏は、中国の戦略を「一見無害な科学施設を建設し、複数の戦略目的を達成する」ものだと指摘する。天文台は星を観測するだけでなく、衛星監視、情報収集、さらには宇宙における軍事作戦支援にも利用される可能性があるというのだ。

宇宙空間における優位性は、地上における通信、金融、軍事などあらゆる分野に影響を及ぼす。中国の宇宙開発は、単なる科学研究にとどまらず、軍事力強化と密接に結びついている可能性が高い。

中国の真の狙いと国際社会の懸念

中国科学院南米天文センターの黄家声所長代理は、アタカマ天文台のプロジェクトは国際社会に開かれていると強調する。しかし、米南方軍報道官は、天文台の運営に中国軍が関与していることを指摘し、懸念を示している。通信の監視や妨害といったリスクも否定できない。

中国の宇宙開発戦略は、国際社会に新たな緊張をもたらしている。アタカマ砂漠の天文台は、その一端を垣間見せる象徴的な存在と言えるだろう。

まとめ:中国の宇宙戦略を読み解く

中国は、アタカマ砂漠の天文台をはじめとする宇宙インフラ整備を通じて、宇宙空間におけるプレゼンスを高めようとしている。表向きは科学研究を掲げているものの、その背後には軍事利用も視野に入れた戦略が潜んでいる可能性が高い。国際社会は、中国の真の狙いを見極め、適切な対応策を講じる必要がある。