住宅ローンを組んでいる方の中には、金利上昇を懸念して繰り上げ返済を検討している方もいるのではないでしょうか。しかし、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」の住宅ローンアナリスト塩澤崇氏によれば、繰り上げ返済は必ずしも得策ではないようです。本記事では、繰り上げ返済のメリット・デメリット、そして賢い資産形成の方法について、専門家の意見を交えながら解説します。
繰り上げ返済増加の背景
近年、auじぶん銀行をはじめとする大手ネット銀行で繰り上げ返済が増加傾向にあります。背景には、日銀の利上げ姿勢があります。2023年10月と2024年10月を比較すると、auじぶん銀行の繰り上げ返済金額は約3倍に増加。変動金利を選択している利用者が多いことから、金利上昇への懸念が繰り上げ返済を後押ししていると考えられます。
住宅ローンのイメージ
繰り上げ返済は地獄の蜘蛛の糸?
塩澤氏は、繰り上げ返済を芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に例え、せっかく掴んだ資産形成のチャンスを自ら手放す行為だと警鐘を鳴らします。住宅ローンは、一般階級から資産階級へステップアップするための、まさに“蜘蛛の糸”のような存在なのです。
住宅ローンは最強の金融商品?
塩澤氏は、住宅ローンを“最強の金融商品”と呼び、その理由として以下の3点を挙げます。
低金利時代の住宅ローン
第一に、日本の住宅ローン金利は、世界的に見ても低金利です。繰り上げ返済による金利負担の軽減効果は限定的と言えるでしょう。
住宅ローン減税の活用
第二に、住宅ローン減税を活用することで、借入額の一定割合が税金から控除されます。残高が多いほど控除額も増えるため、繰り上げ返済は控除額を減らすことになりかねません。
団信による保障
第三に、団体信用生命保険(団信)は、万が一の際に残された家族の住宅ローン返済を保障する制度です。充実した保障内容により、安心して住宅ローンを組むことができます。
R>Gの法則と資産形成
フランスの経済学者トマ・ピケティが提唱した「R>G」の法則は、資本収益率(R)は経済成長率(G)を上回ることを示しています。つまり、長期的に見ると、労働で得る収入よりも、資産運用で得る収入の方が大きくなる可能性が高いのです。
住宅ローンを賢く活用し、手元資金を投資に回すことで、資産形成を加速させることができます。頭金を抑え、住宅ローン減税を最大限に活用しながら、余裕資金で資産運用を行うことが、資産階級への道を切り開く鍵となるでしょう。
お金のイメージ
まとめ
金利上昇が懸念される中、繰り上げ返済は一見魅力的に見えますが、長期的な視点で資産形成を考えるなら、必ずしも最適な選択とは言えません。「R>G」の法則を踏まえ、住宅ローンを“蜘蛛の糸”として活用し、賢く資産運用に取り組むことが重要です。