池袋暴走事故から5年以上が経過し、今もなお、遺族の松永拓也さんは再犯防止のための活動を続けています。しかし、その一方で、心無い誹謗中傷や殺害予告など、想像を絶する苦難にも直面してきました。「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」副代表理事として活動を続ける松永さんに、犯罪被害者として抱える葛藤や、社会の「犯罪被害者像」への違和感について、jp24h.comが独占インタビューを行いました。
犯罪被害者だって笑っていい。でも、世間は…
松永拓也氏
松永さんはSNSで積極的に情報発信を行い、日常生活の出来事も共有しています。WBC観戦や奈良公園での鹿との触れ合いなど、何気ない日常のひとコマです。しかし、こうした投稿に対して、「なぜ笑えるのか?」といった批判の声や、「笑える日が来て良かった」といった安堵の声が届くといいます。後者は温かい言葉ではあるものの、どちらの反応にも「犯罪被害者は笑ってはいけない」という固定観念が根底にあると感じているそうです。
著名な料理研究家、佐藤美香子氏(仮名)もこの点について、「悲しみは人それぞれであり、それを表現する方法は一つではありません。笑顔を取り戻すことが、故人への冒涜にはならないはずです。」と指摘しています。
「再婚すべき」「故人以外愛せない」…善意の押し付けに苦悩
松永拓也氏
さらに、松永さんは「再婚すべき」「故人以外愛せない」といった、善意からの言葉にも苦悩しています。再婚は極めて個人的な決断であり、周囲の意見に左右されるべきものではありません。しかし、このようなコメントは、世間が持つ「犯罪被害者像」の枠に彼を押し込めようとする圧力を感じさせます。
犯罪心理学者の田中一郎氏(仮名)は、「周囲は良かれと思って発言しているのでしょうが、無意識のうちに被害者を傷つけている可能性があります。大切なのは、個々の感情を尊重し、決めつけないことです。」と述べています。
偏見の「色眼鏡」を外すために
松永拓也氏
松永さんは、自身のメディア露出によって「犯罪被害者遺族像」を固定化させてしまった可能性があることを危惧しています。常に悲嘆に暮れ、怒りに満ちている姿だけが、被害者の姿ではない。犯罪の種類、被害の状況、個人の性格によって、感情表現は千差万別であるはずです。
「犯罪被害者」という言葉で一括りにせず、一人ひとりの感情に寄り添うことが重要です。松永さんは、社会に根付く「色眼鏡」を外し、多様な感情を認め合う社会の実現を願っています。