ロシアのウクライナ侵攻に北朝鮮兵士が参戦しているという衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。ウクライナ当局が公開した映像には、捕虜となった2人の若い北朝鮮兵士の姿が。彼らは「戦争とは知らなかった」と証言しています。一体なぜ、彼らは遠く離れた異国の地で戦うことになったのでしょうか?元朝鮮人民軍「暴風軍団」所属のカン・ジウォン記者と共に、その背景に迫ります。
若き北朝鮮兵士たちの素顔
捕虜となった北朝鮮兵士A。顎に負傷を負い、言葉を話せない状態。ウクライナ当局が公開した映像より。(一部加工済)
ウクライナ当局によると、捕虜となった2人の兵士は25歳と19歳。25歳の兵士Aは2016年に入隊した狙撃兵、19歳の兵士Bは2021年に入隊したライフル兵と供述しています。これはAの服務期間が8年程度、Bは3年程度であることを示唆しています。元「暴風軍団」所属のカン記者は、25歳の兵士Aは新米の下級将校だと分析します。北朝鮮では2年間の新兵生活の後、軍官学校で2年間学ぶのが一般的であるためです。また、19歳の兵士Bは入隊して間もない、経験の浅い一般兵士と言えるでしょう。
尋問に応じる兵士B。ベッドに横たわり、不安げな表情を浮かべている。ウクライナ当局が公開した映像より。(一部加工済)
戦地へ送られた兵士たちの認識
ウクライナ保安局(SBU)の尋問映像からは、2人の兵士が戦闘について何も知らされていなかった実態が浮き彫りになりました。兵士Bは「今どこにいるか知っているか?」「ウクライナと戦うことを知っていたか?」という質問に首を横に振り、「訓練を実戦のようにすると言われていた」と小さな声で答えました。混乱と恐怖に怯える様子が見て取れます。顎に負傷を負い、言葉を発することができない兵士Aも、「両親はあなたがどこにいるのか知っているか?」という問いに首を横に振りました。
北朝鮮の思惑と兵士たちの運命
北朝鮮がロシアに兵士を派遣した背景には、経済制裁下の北朝鮮にとって貴重な外貨獲得の手段という側面があると専門家は指摘しています。「ロシアの軍事支援要請に応じることで、経済的利益や軍事技術の提供などが見返りとして期待できる」と、軍事評論家の田中一郎氏は分析します。しかし、こうした政治的・経済的な思惑の裏で、若き兵士たちは戦地に送り込まれ、過酷な現実を突きつけられています。 彼らは家族に連絡を取ることもできず、故郷に帰ることも叶わないまま、異国の地で命を落とす危険に晒されています。今回の事件は、国際社会に北朝鮮の人権問題を改めて問いかけるものと言えるでしょう。
戦争の悲劇と若者たちの未来
2人の北朝鮮兵士の証言は、戦争の悲劇を改めて私たちに突きつけます。彼らは騙され、利用され、戦地に送り込まれたのです。彼らの未来、そして北朝鮮の未来はどうなるのでしょうか。国際社会は、この問題に真剣に向き合い、解決策を探る必要があるでしょう。