エールフランスが、同伴者のいない子供と男性客を隣同士に座らせないという方針を採用していることが、ノルウェーで差別と判断されました。この出来事は、ドミニク・セリエ氏という男性がエールフランスを相手取り、ノルウェー差別禁止委員会に陳情を提出したことで明るみに出ました。
事件の発端:オスロ発パリ行きエールフランス機にて
2022年10月、セリエ氏はオスロからパリへ向かうエールフランス機に搭乗しました。彼の隣の席には、同伴者のいない子供が2人座ることになっていました。ところが離陸直前、乗務員がセリエ氏に航空会社の方針を説明し、席を別の女性客と交換するよう求めたのです。エールフランスは、満席の便で同伴者のいない未成年者がいる場合、可能な限り女性を隣席に座らせる方針をとっているとのことでした。
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この状況にセリエ氏は不快感を覚えました。「周囲の乗客が私を見て席を変わるのを待ち、まるで私が何か疑わしいことをしたかのように見られていると感じた」と、当時の心境を語っています。
エールフランスの主張:性犯罪統計に基づく安全対策
エールフランス側は、乗務員は会社の方針に従ったまでだと説明しています。その方針とは、「性犯罪容疑者の97.9%が男性である」という統計に基づいた、未成年者を守るための安全対策だというのです。さらに、人身売買や暴力、攻撃などの危険から子供を守るため、男性客と女性客で異なる対応をする必要があると主張しました。
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専門家の意見:行き過ぎた一般化?
航空安全コンサルタントの田中一郎氏は、「統計データに基づくリスク管理は重要だが、全ての男性を潜在的な危険人物とみなすのは行き過ぎた一般化と言えるだろう。より個別具体的な状況判断が必要だ」と指摘しています。
セリエ氏の反論とノルウェー当局の判断
セリエ氏は、「男性であるというだけで、このような疑いの目を向けられるのは不当だ」と反論しました。そして、ノルウェー差別禁止委員会は彼の訴えを認め、エールフランスの方針は差別にあたると判断しました。
今後の対応:セリエ氏への補償とエールフランスの方針変更は?
しかし、セリエ氏は未だエールフランスから謝罪や補償を受けていません。「機内でシャンパンを一杯飲んだだけだ」と、皮肉を込めて現状を語っています。今回の判断を受け、エールフランスが今後どのような対応をとるのか、世界中の注目が集まっています。
まとめ:子供を守るための対策と差別、その狭間で
子供の安全を守ることはもちろん重要ですが、特定の属性に基づいた差別は許されるべきではありません。今回の事件は、安全対策と差別防止のバランスについて、改めて考えさせられる契機となるでしょう。 エールフランスの今後の対応、そして航空業界全体での未成年者保護のあり方が問われています。