北朝鮮で深刻な物価高騰が続いており、国民生活に大きな影響を与えています。本記事では、アジアプレスの独自調査に基づき、白米やガソリンをはじめとする生活必需品の価格高騰の実態と、当局の対応、そして国民の苦境について詳しく解説します。
物価高騰の現状:白米、ガソリン、米ドルが軒並み急騰
アジアプレスでは、北朝鮮北部の両江道、咸鏡北道、平安北道で定期的に物価調査を実施しています。2024年1月と11月末の価格を比較すると、その深刻さが浮き彫りになります。
主な品目の価格上昇率
品目 | 1月価格 | 11月末価格 | 上昇率 |
---|---|---|---|
ガソリン | 1万3000 | 2万8000 | 2.15倍 |
軽油 | 1万2000 | 2万1000 | 1.75倍 |
白米 | 5700 | 9400 | 1.65倍 |
トウモロコシ | 3100 | 4300 | 1.38倍 |
1中国元 | 1260 | 3200 | 2.54倍 |
1米ドル | 8450 | 2万8000 | 3.3倍 |
※1000ウォンは、1月初時点で約17.1円、11月末時点で5.4円。
食糧は公設市場での販売が2023年1月頃に禁止され、個人間の非公式取引が主流となっています。燃油や外貨の取引も非公式価格です。
alt=北朝鮮の恵山市で路上販売を行う人々。物価高騰の影響で、非公式市場での取引が活発化している。
国営販売店でも価格高騰と品質低下
非公式市場だけでなく、国営の食糧専売店「糧穀販売所」でも価格高騰が顕著です。2022年頃から公定価格が導入され、白米5000ウォン、トウモロコシ2500ウォンで販売されていましたが、12月初旬には白米8500ウォン、トウモロコシ3100ウォンに値上がりしました。
さらに、品質の低下も深刻です。両江道の取材協力者A氏によると、「トウモロコシは湿気ていたり、腐敗したものが混ざっていたりする」とのこと。国の食糧供給体制に問題が生じている可能性が示唆されます。
alt=北朝鮮の市場で中国元を使用する女性。外貨の使用は取り締まりの対象となっているが、依然として流通している。
当局の強硬な取り締まり
物価高騰を受け、北朝鮮当局は買い占めや売り惜しみに対する厳罰化を宣言。商人への物資没収や家宅捜索などの強硬策に乗り出しています。しかし、根本的な解決策には至っておらず、国民の不満は高まるばかりです。「生きていけない」という悲鳴が各地から上がっている現状を、当局はどのように打開していくのでしょうか。
北朝鮮経済の専門家であるB氏(仮名)は、「今回の物価高騰は、国際的な制裁や自然災害の影響に加え、国内経済政策の失敗も要因の一つ」と指摘しています。「当局の強硬な取り締まりは一時的な効果しか期待できず、抜本的な改革が必要だ」と警鐘を鳴らしています。