トランプ氏再選とウクライナ戦争の行方:停戦交渉は泥沼化か?

ウクライナ紛争の行方は、世界情勢を左右する最重要課題の一つです。来る大統領選でトランプ氏が再選を果たした場合、この戦争はどうなるのでしょうか?国際関係の専門家である筑波大学の東野篤子教授の分析を元に、今後の展望を探ります。

トランプ氏の停戦構想:ウクライナにとっての落とし穴?

ウクライナ情勢ウクライナ情勢

トランプ氏は、早期の停戦を望んでいるとされています。しかし、その真意は「停戦を実現させた」という実績を手に入れることにあり、ウクライナの真の利益は二の次である可能性が高い、と東野教授は指摘します。NATO加盟を認めず、一部領土のロシアへの割譲を容認するような停戦案は、ウクライナ国民にとって到底受け入れられるものではありません。

11月に行われたウクライナ国内の世論調査では、国民の約6割が「ロシアとの妥協は絶対に不可能」と回答しています。ロシアによる度重なる合意違反の歴史を鑑みると、NATO加盟という安全保障の担保なしに停戦に応じることは、将来のロシアによる再侵略を許すことに等しいとウクライナ国民は考えているのです。

ウクライナの苦境:出口の見えない泥沼

トランプ氏トランプ氏

トランプ氏がウクライナの要求を無視して強引に停戦を進めようとした場合、交渉は早々に決裂する可能性が高いでしょう。しかし、国際社会からの批判を避けるため、トランプ氏は「停戦に応じないのはウクライナだ」とゼレンスキー大統領を非難するシナリオも想定されます。

一方、ロシアは現状維持を望んでいるわけではありません。戦時経済体制によってGDPは成長しており、今後数年間は戦争を継続する能力があると見られています。表向きは停戦に応じる姿勢を見せていますが、実際には機会を捉えて更なる領土拡大を狙う可能性が高いと東野教授は分析します。

戦況悪化と士気の低下

ウクライナ兵士ウクライナ兵士

ウクライナ軍は苦戦を強いられています。東部戦線は崩壊の危機に瀕し、反攻で奪還した南部領土も半分以上をロシアに奪い返されています。領土交渉のカードを失いつつあるウクライナには、現状を打破する決定打が見当たりません。

長期化する戦争の中で、兵士たちの士気も低下しています。最前線に配属されてから一度も故郷に帰れない兵士もいるなど、過酷な状況が続いています。加えて、現場の兵士一人一人にまで、戦闘の目的や意義が十分に浸透していないことも問題視されています。

停戦への道筋:混沌とした未来

ウクライナ紛争の行方は、トランプ氏の再選によって大きく左右される可能性があります。彼の外交政策は、ウクライナにとって大きなリスクとなる一方で、停戦へのわずかな希望ももたらすかもしれません。混沌とした状況の中、国際社会はどのような役割を果たすべきなのか、改めて問われています。