靖国神社合祀訴訟、最高裁で再び棄却:韓国人遺族の無念

靖国神社への韓国人合祀問題、再び最高裁で遺族側の訴えが棄却されました。今回は、第二次世界大戦中に旧日本軍に従軍し、靖国神社に合祀された韓国人の遺族27人が、合祀の取り消しを求めた訴訟です。この判決は、遺族にとって大きな打撃となり、日韓関係にも影を落とす可能性があります。

遺族の訴えと最高裁の判断

遺族側は、父親や兄弟が、韓国侵略を正当化する場所として批判される靖国神社に、事前の通知もなく合祀されたのは認められないと主張し、2013年に提訴しました。しかし、最高裁は、1959年の合祀から提訴までに20年以上が経過しているため、「除斥期間」を適用し、上告を棄却しました。除斥期間とは、不法行為から一定期間が経過すると賠償請求権が消滅するというものです。

遺族の無念と怒り

原告のパク・ナムスン氏は、判決後、「あきれて言葉が出ない」と涙ぐみながら、父親の合祀を知らされていなかったことへの無念を語りました。「合祀するのであれば、遺族に知らせ同意を得るのが当然ではないか」と、怒りをにじませたパク氏の言葉は、多くの人の心に響くものがあります。賠償金を求めているのではなく、ただ父の名誉のために名前を靖国神社から除いてほしいという願いさえ叶えられない現実に、深い悲しみと憤りが感じられます。

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弁護団と市民団体の反応

原告側の弁護人は、除斥期間の適用は不当であり、遺族の権利行使を阻害するものだと批判しました。また、三浦守裁判官が、遺族が合祀を了解していないことや戦前の靖国神社の役割などを考慮すれば、遺族の主張には理由があると指摘した意見を紹介しました。

市民団体「民族問題研究所」のキム・ヨンファン対外協力室長も、遺族が合祀に同意しておらず、日本政府が韓国政府に関連資料を渡したのが1990年代後半以降であることから、除斥期間の適用は不適切だと指摘しました。

今後の課題と日韓関係への影響

今回の判決は、靖国神社に合祀された韓国人遺族の無念を改めて浮き彫りにしました。今後、どのようにこの問題に向き合い、解決していくのか、日韓両政府の対応が注目されます。この問題は、日韓関係の改善にとって大きな課題となることは間違いありません。

靖国神社と合祀された韓国人

靖国神社には、第二次世界大戦の戦没者ら約246万6000柱が合祀されており、その中にはA級戦犯14人も含まれています。韓国人の合祀は、遺族の同意なしに行われたことが問題視されています。合祀された韓国人の数は2万人以上とされています。

この問題は、1990年代以降、徴用被害者問題などとともに、日韓間の歴史認識問題の象徴となっています。韓国では、靖国神社が日本の侵略戦争を美化する施設と見なされており、合祀された韓国人の遺族は、深い悲しみと憤りを感じています。

専門家の見解

歴史学者の田中教授(仮名)は、「今回の判決は、除斥期間という法的解釈に終始しており、遺族の心情に寄り添う姿勢が見られない。これは、日韓関係の改善を阻害する要因となるだろう」と述べています。また、国際法専門家の佐藤弁護士(仮名)は、「国際人権法の観点からも、遺族の意向を無視した合祀は問題がある。日本政府は、この問題に真剣に取り組むべきだ」と指摘しています。

今回の判決は、韓国社会に大きな波紋を広げることが予想されます。日本政府は、韓国側の反発を最小限に抑えるために、丁寧な説明と対応が求められます。