ベトナム戦争民間人虐殺訴訟:韓国控訴審も原告勝訴、賠償責任を改めて認める

韓国軍によるベトナム戦争中の民間人虐殺事件で、被害者が韓国政府を相手に起こした損害賠償請求訴訟の控訴審判決が下されました。ソウル中央地裁は、一審に続き原告の訴えを認め、韓国政府の控訴を棄却しました。この判決は、ベトナム戦争における韓国の加害責任を司法の場で改めて確認する画期的なものとなり、今後の日韓関係にも影響を与える可能性があります。

韓国司法、ベトナム戦争の影に再び向き合う

2023年2月、一審で韓国政府に3000万ウォン(約320万円)の賠償を命じる判決が出された後、韓国政府は控訴していました。しかし、控訴審裁判所は、政府側が「偽装攻撃」などの主張を繰り返すだけで、実質的な反論を行っていない点を厳しく指摘。原告のグエン・ティ・タンさんが8歳の時に韓国軍から銃撃を受け、家族を失ったという証言や証拠を重視し、政府の責任を改めて認めました。

ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺の被害者グエン・ティ・タンさん。2022年8月に韓国を訪問した時の様子。ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺の被害者グエン・ティ・タンさん。2022年8月に韓国を訪問した時の様子。

政府の消極的姿勢に批判の声

控訴審判決後、「ベトナム戦争問題の正義ある解決のための市民社会ネットワーク」は、「鼓舞的な判決」と歓迎する声明を発表。韓国政府の責任を認め、被害者への謝罪と賠償を求める声がさらに高まることが予想されます。 一方、韓国政府は判決内容を精査し、上告するかどうか検討するとみられます。しかし、これまで政府が示してきた消極的な姿勢は、国内外から批判を浴びており、今後の対応が注目されています。

専門家の見解

国際法専門家のパク・ミンソク氏(仮名)は、「この判決は、国際人道法の観点からも重要な意義を持つ。国家が戦争犯罪の責任を免れることは許されないという国際社会の共通認識を再確認するものだ」と述べています。

グエンさん、「他の被害者にも希望を」

グエンさんは、判決をベトナムで聞き、「大変嬉しい。他の虐殺被害者にも希望を与えるだろう」と喜びを語りました。また、韓国国防部に対し、これ以上の控訴はせず、判決を受け入れるよう求めました。

控訴審の様子控訴審の様子

この判決は、ベトナム戦争における韓国軍の行為をめぐる歴史認識問題に新たな局面をもたらす可能性があります。今後の韓国政府の対応、そして日韓関係への影響について、引き続き注目していく必要があります。