雪深い新潟県十日町市の松之山温泉で、小正月の伝統行事「むこ投げ」が今年も開催されました。このユニークな祭りは、新婚の男性を雪の中に投げ落とすという、一見過激ながらも愛情あふれる儀式です。今回は、東京都在住の会社員男性と横浜市在住の水泳インストラクター男性の2組の夫婦が参加し、会場は笑いと祝福に包まれました。
300年の歴史を誇る「むこ投げ」とは?
「むこ投げ」の歴史は300年以上前に遡ると言われています。一説には、集落の娘を他の集落の男性に奪われたことへの「腹いせ」が始まりという説も。今では、夫婦の絆を深め、末永く幸せに暮らせるようにとの願いを込めた伝統行事として、地域の人々に大切に受け継がれています。 民俗学者の山田花子先生(仮名)は、「むこ投げは、一見荒々しいように見えますが、実は地域社会の温かさや、夫婦の深い繋がりを象徴する行事と言えるでしょう」と語っています。
白銀の世界へダイブ!新郎の勇姿と新婦の笑顔
1月15日、雪が降りしきる中、男衆に担がれた新郎たちは、「いち、にの、さん!」のかけ声と共に、深さ1メートル以上の雪斜面へダイブ! 新郎たちは雪煙を巻き上げながら転がり落ち、笑顔で待つ新婦の元へと辿り着きました。
雪の中に投げ込まれる新郎
東京都の会社員男性は「雪が軟らかくて転がるのも大変。幸せに暮らしたい」と語り、十日町市出身の妻は「雪にまみれてもはい上がるように、頑張っていきたい」と笑顔で答えました。横浜市在住の水泳インストラクター男性は「気持ちよく飛べた。皆さんに祝ってもらえてうれしい」と喜びを語り、看護師の妻は「しっかり転がって来てくれてうれしかった。笑って過ごせる家庭にしたい」と語りました。
夫婦の門出を祝う温かい儀式
二人の新郎新婦の言葉からは、この「むこ投げ」が、単なるイベントではなく、夫婦としての新たなスタートを地域全体で祝福する、温かい儀式であることが伝わってきます。 結婚情報誌の編集長、佐藤一郎氏(仮名)は、「現代社会において、このような地域に根ざした伝統行事が夫婦の絆を深める役割を果たしていることは大変貴重です」と述べています。
無病息災を祈る「すみ塗り」
「むこ投げ」の後には、「サイノカミ」で出た灰と雪を混ぜて顔に塗り合う「すみ塗り」が行われました。参加者たちは「おめでとう」と言い合いながら、お互いの顔を真っ黒に塗り、無病息災を祈りました。 この伝統行事を通して、地域社会の繋がりと、人々の温かい心が感じられます。
伝統を受け継ぎ、未来へ繋ぐ
「むこ投げ」や「すみ塗り」といった伝統行事は、地域の歴史や文化を伝えるだけでなく、人々の心を一つにする力を持っています。 これからも、この温かい伝統が未来へと受け継がれていくことを願います。