養老孟司氏に学ぶ「数字」との付き合い方:GDPに一喜一憂しない生き方

現代社会において、GDPをはじめとする様々な「数字」が私たちの生活に深く関わっています。経済成長の指標として、健康状態の判断材料として、あるいは日々のコミュニケーション手段として、数字はなくてはならない存在です。しかし、養老孟司氏は、数字に振り回されるのではなく、数字との適切な距離感を保つことの重要性を説いています。本記事では、養老氏の新刊『人生の壁』を参考に、数字に囚われすぎない生き方を探ります。

数字の功罪:便利さと落とし穴

数字は、複雑な情報を簡潔に表現し、客観的な比較を可能にするという利点があります。経済状況を把握するためのGDP、健康状態を示す血液検査の数値、デジタル化された音声データなど、数字は私たちの生活を豊かにし、より良い判断を下すための材料を提供してくれます。

しかし、数字だけに頼りすぎることには落とし穴があります。ジョージナ・スタージ著『ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙されるのか』では、統計データの解釈の難しさや、数字の背後に隠された真実を見抜くことの重要性が指摘されています。統計学の専門家であるスタージ氏でさえ数字の扱いに慎重であるように、私たちも数字を盲信するのではなく、批判的に捉える姿勢を持つべきでしょう。

医療検査の数値データのイメージ医療検査の数値データのイメージ

養老孟司氏の視点:「数字」ではなく「現実」を見よ

養老氏は、病院での検査結果がすべて数字で示されることに違和感を抱いています。血液検査、CTスキャンなど、私たちの身体に関する情報は、数字という抽象的な形で表現されます。まるで身体の中を流れるのは血液ではなく数字であるかのような錯覚に陥ると、養老氏は指摘します。

デジタル化が進んだ現代社会では、音声データや画像データなど、かつては感覚的に捉えていた情報も数字の集合体として処理されています。私たちは、数字を通して間接的に現実を認識している場面が増えているのです。

デジタルデータのイメージデジタルデータのイメージ

数字との適切な距離感:バランス感覚が大切

養老氏は、数字を全否定するのではなく、数字との適切な付き合い方を見つけることが重要だと述べています。「政府の統計は嘘ばかりだ」と決めつけるのは、「数字があるから確かだ」と盲信するのと同じくらい危険です。重要なのは、数字の持つ力と限界を理解し、バランス感覚を持って数字と向き合うことです。

例えば、GDPは経済状況を把握する上で重要な指標ですが、GDPの上昇が必ずしも国民の幸福度向上に繋がるわけではありません。数字だけに囚われることなく、現実社会の状況を多角的に捉えることが大切です。

数字に振り回されない生き方

数字は便利なツールですが、それ自体が目的ではありません。数字を道具として使いこなし、より豊かな人生を送るために、以下の点を意識してみましょう。

  • 数字の背後にある文脈を理解する
  • 複数の情報源を比較検討する
  • 自分の感覚や経験を大切にする
  • 数字に振り回されず、主体的に判断する

数字に囚われすぎず、自分自身の価値観に基づいて行動することで、より充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。