青春ドラマの金字塔として語り継がれるべき作品が、時代の波に飲まれ、今では視聴することさえ叶わない「幻のドラマ」となってしまった作品が存在します。1994年にフジテレビ系列で放送された『17才-at seventeen-』もその一つ。今回は、内田有紀さん、一色紗英さん、武田真治さんら豪華キャスト陣が織りなす、この幻の青春ドラマの魅力と、封印に至った背景に迫ります。
瑞々しい青春と、時代の空気を映し出す物語
『17才-at seventeen-』は、セントウェルトン高等学院を舞台に、個性豊かな高校生たちの日常を描いた青春群像劇です。内田有紀さん演じる日高巧美の転入をきっかけに、それまで平穏だった生徒たちの生活に変化が生じ、様々な出来事を経験しながら成長していく姿が瑞々しく描かれています。脚本には、数々のヒットドラマを手掛けた岡田惠和氏も参加しており、等身大の高校生たちの葛藤や喜び、友情、恋愛模様が繊細に表現されています。当時の人気若手俳優たちが勢揃いし、彼らのフレッシュな演技も大きな魅力の一つでした。
問題視された飲酒・喫煙シーンとスポンサー降板騒動
しかし、このドラマは、劇中の飲酒・喫煙シーンの多さが問題視され、大きな波紋を呼びました。特に、武田真治さん演じる火野はヘビースモーカーとして描かれ、巧美も日常的に飲酒するシーンが頻繁に登場しました。高校生たちが集まるカフェ「ピーズ」でも、伊原剛志さん演じるマスターが未成年である彼らに平然と酒を提供する場面もあり、当時の視聴者から批判の声が上がったのです。
セントウェルトン高等学院の生徒たち。カフェ「ピーズ」で談笑するシーン。
「高校生のリアルな姿を描いている」という制作側の意図もあったようですが、行き過ぎた描写は、社会的な責任を問われる事態へと発展。スポンサー降板の危機に直面したフジテレビは、「法律で未成年の飲酒は堅く禁じられています」というテロップを流すことで対応を図り、最終回までの放送は実現したものの、その後、再放送やDVD化、配信などは一切行われず、視聴率も公表されていません。
幻のドラマに残された光と影
時代の変化とともに、社会の価値観や倫理観も変化します。かつては許容されていた表現が、現代では問題視されるケースも少なくありません。『17才-at seventeen-』は、まさにその時代の空気を映し出した作品と言えるでしょう。若手俳優たちの瑞々しい演技、共感を呼ぶストーリー展開など、多くの魅力を持ちながらも、過激な描写によって封印されたこのドラマは、日本のテレビドラマ史における一つの教訓として、記憶されるべきかもしれません。
今だからこそ考える、表現の自由と責任
表現の自由は、民主主義社会において重要な権利です。しかし、その自由には責任が伴います。『17才-at seventeen-』のケースは、表現の自由と、メディアの持つ社会的責任、そして時代の変化による価値観の変遷を改めて考えさせる契機となるのではないでしょうか。
内田有紀さん。当時を思わせる、瑞々しい魅力が溢れている。
幻のドラマとなった『17才-at seventeen-』。この作品の存在は、私たちに多くの問いを投げかけます。そして、表現の自由と責任について、深く考えるきっかけを与えてくれるはずです。