中国では、かつての人口抑制策「一人っ子政策」から一転、少子化対策に躍起になっている。しかし、その政策は強硬とも言えるもので、国民からは戸惑いの声も上がっている。この記事では、中国政府の少子化対策の現状と課題、そしてその背景にある社会問題について掘り下げていきます。
政策転換:罰金から奨励へ
かつて、人口抑制のために罰金や中絶を強要していた中国政府。しかし、近年の人口減少を受け、その政策は180度転換しました。「二人っ子政策」、「第3子容認政策」を経て、現在は様々な出産奨励策を打ち出しています。税額控除、出産・育児休暇の延長、住宅ローン優遇など、経済的な支援策が目立ちます。
alt=中国の出生率低下を懸念するポスター
強硬なアプローチと国民の反応
しかし、そのアプローチは時に強硬です。公務員による妊娠計画の聞き取りや、専門チームによる妊娠促進活動など、プライバシーを侵害するような事例も報告されています。教科書の挿絵が一人っ子家庭から多子家庭へと変更されるなど、プロパガンダ的な側面も否めません。
専門家の見解
経済誌エコノミストの報道によれば、江蘇省の女性は公務員から生理周期や妊娠計画について電話で尋ねられたという。このような政府の介入は、国民の反感を買っている可能性があります。「結婚・出産は個人の自由であるべき」という声も上がっており、政府の強硬な姿勢はかえって少子化問題を悪化させる可能性も懸念されます。
プロパガンダと現実のギャップ
政府は出産のメリットを強調するプロパガンダを展開していますが、その内容は時に非現実的です。例えば、出産による知能向上やがんリスク低下といった、科学的根拠に乏しい情報も発信されており、批判を浴びています。
少子化の根本原因
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ハリー・クルーズ氏は、長年の「一人っ子政策」による心理的影響や景気低迷が出産忌避につながっていると指摘。根本的な解決策の不在を危惧しています。結婚支援プラットフォームの開設など、結婚促進にも力を入れていますが、若者の結婚観の変化や経済的不安といった課題も山積しています。
深刻化する少子高齢化
中国の合計特殊出生率は1.0と、人口維持に必要な2.1を大きく下回っています。結婚件数も減少傾向にあり、人口減少は深刻な社会問題となっています。2035年には人口が13億9000万人以下に減少すると予測されており、経済成長への影響も懸念されます。
今後の展望
中国政府は、少子化対策に巨額の予算を投じていますが、効果は限定的です。国民の意識改革や経済的支援の拡充など、多角的なアプローチが必要不可欠です。少子化問題は、中国社会の持続可能性を脅かす大きな課題となっており、その解決策は未だ模索段階にあります。
まとめ
中国の少子化対策は、強硬な政策と国民の戸惑い、そして現実的な課題が複雑に絡み合った状況です。政府の努力は不可欠ですが、国民の理解と協力なしには、少子化問題の解決は難しいでしょう。今後の中国社会の行方を左右する重要な問題として、引き続き注目していく必要があります。