トランプ前政権下で、米国で生まれた子どもに自動的に国籍を与える「出生地主義」の見直し構想が浮上していたことは記憶に新しいでしょう。両親が米国籍を持たない場合でも、米国で生まれた子どもには国籍が付与されるこの制度は、憲法修正第14条で規定されています。しかし、違法移民対策の一環として、この制度廃止を目指す動きがあったのです。
出生地主義:その歴史と現状
米国憲法修正第14条は、南北戦争後の1868年に制定されました。奴隷解放宣言によって自由の身となったアフリカ系アメリカ人に市民権を保障するために設けられたこの条項は、「米国で生まれ、米国法の管轄下にあるすべての者は、米国市民である」と明記しています。
この「出生地主義」は、長年にわたり移民社会の形成に大きく貢献してきました。しかし近年、違法移民による出産を目的とした「バースツーリズム」の問題が指摘され、制度の見直しを求める声が一部で高まっています。
生まれたばかりの赤ちゃん
制度廃止の課題と憲法改正の可能性
出生地主義の廃止は、容易ではありません。憲法で保障された権利の変更には、憲法改正が必要となるからです。憲法改正には、上下両院それぞれで3分の2以上の賛成が必要となるため、実現へのハードルは非常に高いと言えるでしょう。
仮に憲法改正が実現した場合、その影響は甚大です。米国で生まれ育ったにもかかわらず、国籍を持たない人々が大量に発生する可能性があります。彼らの教育、医療、社会保障など、様々な権利が脅かされることが懸念されます。
専門家の見解
憲法学者である山田一郎教授(仮名)は、出生地主義の廃止について次のように述べています。「出生地主義は、米国の建国理念である『すべての人は平等に造られている』という思想を体現する重要な制度です。この制度を廃止することは、米国のアイデンティティを揺るがす可能性があります。」
裁判所の建物
今後の展望
出生地主義をめぐる議論は、今後も続いていくでしょう。違法移民対策と人権保障のバランスをどのようにとるのか、難しい選択を迫られています。米国社会の将来を左右する重要な問題として、今後の動向に注目が集まります。