ガザ停戦:破壊された故郷へ、住民の帰還と不安、そしてハマスの存在感

停戦合意から数日、パレスチナ自治区ガザでは、破壊された街へと住民が戻り始めています。しかし、そこは変わり果てた故郷。喜びよりも、不安と絶望が渦巻く現実が待ち受けていました。

帰還と絶望:変わり果てた故郷の現実

ガザ南部ラファでは、イスラエル軍の地上侵攻開始以来、避難生活を余儀なくされていた住民たちが、自宅の状況確認のため、街に戻り始めています。マハディ・バグダリさん(39歳)もその一人。ハンユニスの避難所で家族6人とテント生活を送っていましたが、破れたテントでの生活は限界に達し、危険を承知でラファの自宅へと戻りました。しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、想像を絶する光景でした。街の建物は破壊し尽くされ、道路には遺体が放置されたまま。自宅も半壊し、家具は散乱、水道も電気も止まった状態でした。「どうやって再建すればいいのか…」バグダリさんは途方に暮れています。

ガザ最南部ラファで破壊された自宅から持ち物を探す住民ガザ最南部ラファで破壊された自宅から持ち物を探す住民

イスラエル軍はガザ市など北部への住民の帰還を依然として許可しておらず、今後の見通しは不透明です。

ハマスの存在感:支配を強調する狙い

停戦合意後、ガザの街には銃を携えたハマス戦闘員や警察官の姿が目立つようになりました。これは、ガザにおけるハマスの支配力を内外に示す狙いがあると見られています。国際社会からの批判を浴びながらも、ハマスは復興支援の主導権を握ろうと躍起になっているのです。

支援物資とハマスの統制:略奪を防ぐための取り組み

国連によると、21日には897台のトラックがガザに搬入され、支援物資が届き始めています。停戦前に高騰していた砂糖などの生活必需品も価格が下がり始め、住民の生活再建へのわずかな希望となっています。現地の人道支援関係者によると、ハマスの警察官は要衝に立ち、トラックを誘導したり、破壊された家からの略奪を防いだりするなど、治安維持に努めているとのこと。停戦前に支援トラックを襲撃していた武装集団の姿も消えたといいます。

ハマスの警察官が交通整理を行う様子ハマスの警察官が交通整理を行う様子

しかし、こうしたハマスの行動の裏には、支配地域における秩序の維持と、ひいては自らの権力基盤の強化という思惑も見え隠れします。東京大学中東研究センターの山田教授(仮名)は、「ハマスは今回の戦闘で受けた被害を誇張し、国際社会からの支援を最大限に引き出そうとしている」と指摘しています。

不安な停戦:住民の胸に去来する影

支援物資が届き始めたとはいえ、住民たちの生活再建への道のりは険しく、不安は尽きません。ラファに戻ったナアイマ・マアディさん(53歳)は、自宅が全壊し、夫と9人の子供とともにハンユニスのテント生活を続けるしかありません。「この停戦も、どうせ一時的でしょう…」と諦めたように語りました。

破壊されたガザの街破壊されたガザの街

ガザの住民たちは、いつ戦闘が再開されるかわからないという恐怖の中で、生活再建への一歩を踏み出そうとしています。真の平和と安定が訪れるまで、彼らの苦難は続くのです。