皇居で毎年恒例となっている歌会始の儀。2025年の題は「夢」。全国、そして世界中から寄せられた1万6000首余りの歌の中から選ばれた歌々が披露されました。天皇皇后両陛下をはじめ、皇族方の歌には、それぞれの個性や温かい想いが込められています。歌会始に詠み込まれた「夢」を通して、皇族方の心に触れてみましょう。
高円宮妃久子さま、難民キャンプの若者たちの未来に願う
高円宮妃久子さまは、2023年に長女の承子さまと共に訪れたヨルダンのパレスチナ難民キャンプでの体験を歌に詠みました。若者たちが医者や教師、政治家になりたいと、未来への希望を語る姿に心を打たれた久子さま。その後の彼らの幸せを願う気持ちが、歌の最後に凝縮されています。
ヨルダンの 難民キャンプに 若きらは
これからの夢を 語りをりしが
歌の選者である歌人の永田和宏氏も、この歌の結句「語りをりしが」の「が」に込められた作者の思いに深く感銘を受けたそうです。 「夢を語っていた、けれど今はどうしているだろうか…」という、未来への不安と祈りが表現されていると評しています。
高円宮妃久子さま
承子さま、母の絵本に思いを馳せる
承子さまは、「夢」というお題から、母である久子さまが執筆した絵本『夢の国のちびっこバク』を連想し、歌を詠みました。幼い頃に怖い夢を食べてくれた絵本の主人公「バックン」も、きっと大人になっただろうと想像する、温かい内容です。
夢の国の ちびっこバクも
三十年(みそとせ)を わが夢食(は)みつつ
おとなになりしか
永田氏はこの歌の瑞々しい表現を高く評価しつつも、「もっとたくさん歌を作ってください」と久子さまに常々お願いしているというエピソードを明かしています。多忙な公務の中でも、メールの返信が驚くほど速い久子さま。そのバイタリティには感服すると永田氏は語っています。
佳子さま、幼い頃の情熱を鮮やかに描く
秋篠宮家の次女、佳子さまは、幼い頃に時間を忘れて絵を描いていた思い出を歌に詠みました。キャンバスに向かう夢中な様子が、鮮やかに目に浮かぶようです。
キャンバスに 夢中になりて 描きゐしか
の日のことはなほ あざやかに
幼い頃の純粋な情熱を、繊細な言葉で表現した佳子さま。この歌からは、芸術への深い愛情が感じられます。
皇室と和歌の深い繋がり
古来より、天皇や皇族方は歌を詠むことで、国民との繋がりを深めてきました。歌会始は、その伝統を今に伝える大切な行事です。それぞれの歌に込められた「夢」は、私たちに希望と勇気を与えてくれるでしょう。 皇族方の歌を通して、日本の文化と歴史の重みを感じ、未来への希望を共有する機会となることを願います。