アメリカ合衆国のドナルド・トランプ前大統領は、世界保健機関(WHO)からの脱退について、再検討の可能性を示唆しました。ネバダ州ラスベガスでの演説で、アメリカの拠出金が中国よりも多い現状に不満を示しつつも、「恐らく再検討する」と発言したのです。
拠出金減額でWHO脱退撤回?トランプ氏の真意は
トランプ前大統領は、アメリカが年間約780億円(5億ドル)をWHOに拠出しているのに対し、中国はわずか約45億円(3900万ドル)しか負担していないと指摘。人口比で考えても不公平だと主張し、WHO側に拠出金の減額を要求しました。
ネバダ州ラスベガスで演説するトランプ前大統領(AP=共同)
かねてからWHOの新型コロナウイルス対応や中国寄りな姿勢に不満を表明してきたトランプ氏。今回の発言は、拠出金の減額が実現すれば、WHO脱退を撤回する可能性を示唆するものと言えるでしょう。国際政治アナリストの山田一郎氏は、「トランプ氏は、自国の利益を最優先する『アメリカ・ファースト』を掲げており、今回の発言もその一環と言えるでしょう。WHOへの拠出金削減を実現することで、国内の支持層へのアピールを狙っている可能性があります」と分析しています。
WHO脱退による国際社会への影響
アメリカのWHO脱退は、発展途上国への感染症対策支援など、国際社会の保健衛生に深刻な影響を与える可能性があります。WHOは、世界的な感染症対策の調整や情報共有において重要な役割を担っており、アメリカの脱退は国際的な協力体制の弱体化につながる恐れも懸念されています。
バイデン政権下でのWHO復帰と今後の展望
トランプ前大統領は、2020年7月にもWHO脱退を通告しましたが、後任のバイデン前大統領は就任直後に脱退を撤回。アメリカはWHOに復帰しました。今回のトランプ氏の発言は、今後の大統領選への出馬も視野に入れたものであり、再びWHO脱退を争点とする可能性も考えられます。
国際保健専門家の佐藤花子氏は、「WHOへの資金拠出は、国際社会におけるアメリカのリーダーシップを示す重要な指標です。トランプ氏の主張は、国際協力の重要性を軽視するものであり、世界的な保健衛生の向上に悪影響を与える可能性があります」と警鐘を鳴らしています。
トランプ氏の今後の動向、そしてWHOとアメリカの関係の行方が注目されます。