建物の設備管理に就く人材が不足している。生活に欠かせない「ごみ処理」清掃工場でも同様だ。
当たり前のように私たちは日々、ごみを出している。だが、清掃工場の安定稼働のため、どのような人々が日々尽力しているのかまではわからない。清掃車でごみを搬入する人々でさえ、清掃工場の業務の一部しか見られないので全容を把握できない。
そこで筆者は、東京都墨田区にある墨田清掃工場を訪問し、設備管理職の方々を取材した。焼却炉の安定稼働のため「裏方」として尽力している人たちは、どのような思いで日々仕事に取り組んでいるのだろうか。
■清掃工場は「1万を超える設備と機械の集合体」
清掃工場は24時間稼働し、焼却プラントでごみを焼却している。また、ごみを最終処分場に持ち込む前に焼却処理し、容積を1/20に減容。焼却によってばい菌や害虫、臭いの発生を防ぎ、衛生的な環境を保全している。
もちろん排ガスや排水も出るが、その中の有害物質の発生を抑制・削減し、環境への負荷低減も欠かせない。
【写真】プロフェッショナルな知識と技が光る設備管理職に密着取材した(10枚)
ほかにも焼却の過程で発生する熱エネルギーで蒸気を作り、発電や熱供給を行っている。作られた電気は清掃工場の稼働で有効利用され、余った電気は電気事業者に売却する。
発電の原理は火力発電と同様で、「墨田清掃工場発電所」として登録されている。また近隣の区施設へ高温水の送水も実施している。
このような機能を持つ清掃工場の一連の焼却プラントは、廃棄物処理法、ダイオキシン類対策特別措置法、電気事業法等の多くの法規制を受ける複合プラントだ。まさに「1万を超える設備・機械の集合体」であり、大半は排ガス等の公害を防止するために機能している。
これらを維持管理し、安定的に稼働させるために幅広い知識や技術を持ち、現場で奮闘している人たちがいる。東京23区で言えば、東京二十三区清掃一部事務組合(以下、清掃一組)の「設備管理職」の方々である。この設備管理職の方々と事務・技術系職員の方々が協力し合って清掃工場を安定稼働させ、住民の衛生的な生活を支えている。
設備管理職は清掃工場の安定稼働のため、日常〜年次の点検や法定点検、また異音・異臭・振動などから故障の予兆を察知し、技術職の指導のもとで予防保全・事後保全のための補修作業を行う。