日本において少子高齢化が進む中、現役世代の社会保険料負担は増大の一途をたどっています。このような状況下で、自民党との連立与党入りからわずか2カ月ほどの日本維新の会が、「社会保険料を下げる改革」を主要政策として掲げる一方で、党内に新たな政治とカネを巡る疑惑が浮上しています。特に、党の地方議員らが国民健康保険料の支払いを不当に低く抑える「国保逃れ」に関与しているという指摘があり、党代表である吉村洋文氏も頭を悩ませています。この疑惑は、維新の会の掲げる「身を切る改革」という看板政策に矛盾を投げかけるものです。
「身を切る改革」に逆行する疑惑の手口
会社員の給与明細で天引きされる社会保険料の額にため息をつく人は少なくありません。例えば、年収600万円、月収換算で50万円の会社員の場合、加入する健康保険組合や地域によって異なりますが、おおむね月7〜8万円を健康保険料や厚生年金保険料として支払うのが一般的です。物価高騰が続く中でこの負担は重く、維新の会が「社会保険料を下げる改革」を訴える背景には、国民のこうした声があります。
しかし、その看板政策に疑問符が付くような指摘が、12月10日の維新のお膝元である大阪府議会でなされました。ある一般社団法人において、国民健康保険(国保)の加入者である個人事業主などを「理事」として招き、社会保険(社保)に切り替えるという手法が横行しているというものです。このスキームでは、法人が理事に対して最低限の報酬しか支払わないため、理事はそれに対応する低額な社会保険料の支払いで済むようになります。本来ならば高額な国保料を支払うはずの維新の地方議員も、この法人の理事に名を連ねているとされ、不当に保険料を低く抑える「脱法的」な行為ではないかと問題視されています。
日本維新の会代表、吉村洋文氏
大阪府議会での追及と吉村代表の反応
この疑惑を巡る質問は、大阪府議会の自民党所属である占部走馬(うらべそうま)府議によって行われました。占部府議は、こうした脱法的なスキームの規制を吉村知事に強く求めました。自身のSNSなどで社会保障制度改革について詳細に解説している吉村代表ですが、身内に関わるこの指摘に対しては「不正であれば許されるものではない」と述べるに留まり、具体的な対応策については踏み込みませんでした。この発言は、党の顔である吉村氏にとっても、この問題の深刻さを示唆しています。
「維新の議員も多数」—勧誘の実態
占部府議は、質問の経緯について詳しく語っています。今年の夏ごろ、フリーランスの知人から相談を受けたことがきっかけでした。その知人がビジネスマンの会合に参加した際、この法人の人物から「高い国保料を払うなら、ウチの理事になって、社保に入らないか」と営業を受けたといいます。知人が違法性を問うと、「維新の議員もたくさんいるから大丈夫」という返答があったとされ、その不審な内容に占部府議へ相談が持ち込まれました。
「コスト削減の提案」資料が示す実例
勧誘の際に使われたとされる資料は「コスト削減の提案」と題されており、社会保険加入者となるメリットが詳細に記されています。「皆様の社会保険料負担額を最低水準に落とすことが可能」と明記され、具体的な試算まで示されています。例えば、年収1000万円超の弁護士であれば約86万円、年収500万円の配送業者であれば約71万円、それぞれ保険料を抑えられると提案されていました。この魅力的な提案に惹かれた人は多く、件の法人の登記簿では、600名以上もの理事が確認されており、広範囲にわたる影響が懸念されています。
この「国保逃れ」疑惑は、国民の負担軽減を訴える日本維新の会にとって、その信頼性を大きく揺るがしかねない問題です。連立与党として政治改革を推進する立場にある維新の会が、自らの足元でこのような脱法的な行為が横行していると指摘されたことは、国民からの信頼回復に向けての説明責任が強く求められる事態と言えるでしょう。





