欧州連合(EU)は27日、旧ソ連の構成国モルドバに向け、天然ガスの購入などのために3千万ユーロ(約48億円)を緊急支援すると発表した。ロシアが1日に同国への天然ガス供給を停止して以降、親ロシア住民の分離独立派が支配する「沿ドニエストル共和国」では35万人以上の電力や暖房が止まり、危機的な状態になっていた。
【画像】ロシアがガス供給止めて親ロ派地域で暖房停止 モルドバへの圧力裏目
沿ドニエストルはこれまで、ロシアからウクライナ経由のパイプラインで天然ガスの供給を受けてきた。しかし、昨年末にウクライナとの通過契約が期限を迎え、ウクライナが契約の延長を拒否。別ルートでの供給も可能だったが、ロシアはモルドバ側との債務問題の解決が必要だとして供給停止に踏み切り、孤立していた。
ロイター通信によると、モルドバのレチャン首相はEUの発表を受け、ハンガリーの業者と天然ガスの供給契約を結ぶ方針であることを明らかにした。供給されたガスは2月1日から10日までの間、沿ドニエストルの火力発電所で使われる予定だという。
モルドバは現在、EUと加盟交渉を行っており、ロシアのウクライナ侵攻も厳しく非難してきた。その中でのロシアによるガス供給の停止は、モルドバへの政治的な圧力だと反発している。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は「沿ドニエストルの35万人以上の住民が、暗闇と寒さの中に取り残されている。困難な時こそ『真の仲間』が分かるものだ。だからこそ我々は、命綱を投げることを決めた」とコメントした。(ブリュッセル=牛尾梓)
朝日新聞社