1月、韓国人観光客が急増したことを受けて、突然上海で始まった“スーパーカーショー”。そして1月29日、東京タワーで予定されている春節ライトアップ……この二つはいずれも、中国のSNSで大きな話題を呼んでいる。そしてその裏には、中国人の複雑な想いが隠れているという点でも、共通しているのだ。日本人にはおそらく思いも付かない、中国人特有の「考え方」とは?(日中福祉プランニング代表 王 青)
● 上海に集まる韓国人観光客
中国政府は2024年11月7日、韓国人旅行者への短期滞在ビザ免除措置を発表した※。これをきっかけに、週末を利用して中国へ旅行する韓国の若者が急増している。中国メディア「正観新聞」によると、「金曜の仕事帰りに中国へ行く」という新しいトレンドが韓国の若者の間で注目を集めているという。
コロナ禍でインバウンドが激減した中国。韓国だけではなく、中国政府は2024年末までに、合計38カ国へのビザなし渡航を認めている。日本人旅行者への短期滞在ビザ免除も11月22日に発表された。これが奏功したようで、中国各地の観光名所に外国人観光客が増えつつあるのだ。
中国を訪れる韓国人旅行客の中でも、特に人気なのが上海だ。飛行時間わずか2時間で着く近さと、治安の良さが理由として挙げられる。中国の旅行大手・携程旅行(Ctrip)の調査によると、上海への韓国人観光客の予約件数は前年同期比180%以上増加したという。筆者も昨年末上海に滞在していたときによく見かけた。髪型や服装から、一目で韓国人だと分かるからだ。
韓国人観光客たちが訪れるのは、上海ディズニーランドや外灘(バンド)、東方明珠(テレビ塔)といった定番観光地に加え、大韓民国臨時政府の旧跡(韓国人にとって、独立運動の聖地とされている)や、旧フランス租界にある歴史的建造物「武康大楼」がそびえたつ武康路なども人気だという。
● 1月中旬、突然「路上スーパーカーショー」が始まった
しかし2024年1月中旬、この平和な観光風景に異変が起きた。人気スポットである武康路周辺に、突然、たくさんの高級車が集結し始めたのだ。ランボルギーニ、フェラーリ、ロールスロイス、ポルシェなど、世界的に有名なスーパーカーや限定モデルが次々と集まり、まるでモーターショーのような光景が展開されるようになった。
カラフルで派手な高級車が集結する事態は、SNS上でも「200万元(約4000万円)以下の車は恥ずかしくなる」と話題になるほどで、瞬く間に大勢の見物人が集まるようになったのだ。
しかしそもそも、なぜ上海でこんな事態が起きるようになったのだろうか?
● 「上海には高級車がない」?〜愛国心か、見せびらかしか
この「ショー」の目的は、「韓国人を驚かせる」「韓国人観光客に中国の経済力を見せつける」ために始まったと言われている。というのは、かつて上海を訪れたある韓国人が、「上海には高級車がない」と帰国して発言した、という噂が流れたからだ(後に、この噂は根拠のないものだと韓国メディアが検証している)。
これに対し、「上海には高級車があるぞ」「上海の経済力はすごいぞ」と見せつけるべく、たくさんのスーパーカーで中国人が武康路に集まるようになった、というのである。
「高級車で我が国の侮れない経済力を見せつける」という新しい“文化”は、瞬く間に中国のSNSを賑わせた。「よくやったぞ!我が国の力を見せつけてくれている!」「これこそ真の愛国行為だ!我が国の経済力を世界に示そう!」と、興奮気味にコメントを投稿する人々が後を絶たなかった。